方針転換

 〈過ちて改めざる/是(これ)を過ちという〉〈過ちて改むるに憚る(はばか)ことなかれ〉…過ちをそのままにしておくことこそ過ちなのだ、改めることをためらってはいけない-どちらも広く知られる論語の教え▲明確に「間違っていました」と発言したわけではないが、方針転換には違いない。18歳以下の子どもに対する10万円分の給付を巡り、岸田文雄首相が昨日、全額を現金で給付することを容認する考えを示した▲半分の5万円を年内に現金で、残りの半分は子育て関連に使途を限定したクーポンで来春に向けて配る方針が事実上、撤回された。県内でも複数の自治体が現金での給付に向けた検討を始めているそうだ▲この施策を巡る“そもそも論”のバラマキ批判は消えていない。せめて、半分は確実に消費に回るように…の狙いを込めたクーポンだったが、巨額の事務経費が問題視された。その額967億円▲配られて使い勝手がいいのは現金だ。配る側は手間が増え、対象者の手元に届くまでの時間は延び、しかも余計な経費が極端に膨らむのでは、いいところが一つもない。野党や世論の反発は当然だった▲早々の軌道修正。論語を地で行く対応か、批判に右往左往してふらふらとブレているのか、持ち前の「聞く力」が発揮された柔軟性か-評価は分かれそうだ。(智)

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