給付金の今昔

 もう話題に上ることはなく、ご記憶の方も少ないだろう。12年前、麻生太郎氏が首相のとき、国民1人あたり1万2千円の定額給付金を政府が配った▲意味があるのか、とコラムに書いた筆者はかろうじて記憶にあるが、白状すれば給付金をどう使ったか、まるで覚えがない。調べてみたら当時、大方の国民が給付に反対していた。ご機嫌取りの小遣いを握らされるような不快さを感じたのだろう▲昨年の一律10万円の給付は、新型コロナ対策と言いながら国民になかなか届かず不興を買った。多くは貯蓄され、消費に回らなかったとされる▲1カ月余りで「第2次」に衣替えした岸田内閣の、最初の一手になる。所得制限をかけて18歳以下に10万円を給付することで与党が合意した▲国民の共感は得られるか。助かる家庭があるのは確かだが、胸でもやもやすることもある。所得制限で給付の対象外になるのはわずかなのに「ばらまきではない」と胸を張れるのか。子育て支援か経済対策か、そもそも目的は何なのか…▲給付するのならばコロナで経済的に打ちのめされた人々をおいてほかにないのに、と「最初の一手」にもやもやが膨らむ。本当に必要とする人に配ること、ためずに使ってもらうこと。そうすることが肝心なのだと、過去の「給付金騒動」は教えている。(徹)

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