来春の選抜出場確実、聖隷クリストファー高の上村敏正監督
静岡・聖隷クリストファー高の上村敏正(うえむら・としまさ)監督は、今秋の東海大会でチームを準優勝に導き、来春の選抜大会出場が確実となった。正式に決まれば、監督として3校目の甲子園となる。指導者として大切にしているのは、選手に「なるほど」と思わせること。受けた言葉に納得した選手には、変化が生まれるという。
聖隷クリストファー高にとっては1985年の創部以来初の甲子園に。現在64歳の上村監督は浜松商、掛川西に続き、3校を聖地に導いたことになる。高校野球の指導者が選手と過ごせる期間は2年半。限られた時間で能力を高めたり知識を深めたりするため、大切にしていることがある。
「指導者と選手は、ずっと一緒にいるわけではありません。選手は部活の時間に指導者の言葉を吸収して、部活以外の時間で自主性を持って野球に取り組めば成長できます。指導者に求められるのは、選手に『なるほど』と思わせること。選手に変化を起こさせることだと思っています」
納得すれば話に耳を傾け、自ら技術や知識を磨くようになる。例えば、試合中に相手投手のクセを選手に伝える。「『相手投手の何が見える?』と問いかけます。違いに気付かない選手に直球とカーブの時に投手の動きがどのように違うかを教えると表情が変わり、他にもクセがないか興味を持ち始めます」。球種が分かれば、打席だけでなく走者の時も優位に立てる。選手が説得力のある監督に信頼を寄せ、自ら学ぶ姿勢に変わっていくのは自然な流れといえる。
“試合に勝ちたい”は同じでも…「アプローチは変えていく必要がある」
上村監督は、浜松商で選手としても甲子園に出場した。当時、指導者は絶対的な存在という意識で、言われたことに疑問を持たず、がむしゃらに練習していたという。厳しさに耐え、日本一苦しい練習を乗り越えた成果が甲子園出場だったと振り返る。ただ、時代が変われば、指導者にも変化が必要と考えている。
「考え方を押し付けたり、練習を強制したりしても、今の選手たちの行動は変わりません。逆に、指導者の話や練習の目的に納得すれば、積極的に頭も体も動かします。野球が上手くなりたい、試合に勝ちたいという気持ちは、時代を問わず同じかもしれませんが、そのためのアプローチは変えていく必要があると思います」
来春の選抜に出場すれば、上村監督は昭和、平成、令和と3つの元号で聖地に立つ。積み重ねた経験による説得力と、時代に合わせた対応力。決して偶然では成し遂げられない。(間淳 / Jun Aida)
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