どうなるマンション相場、好調な首都圏の新築は高すぎて買えない?今後の行方

いまマンションの価格が高騰しています。2021年の年明けからの傾向とエリア別の動向、価格の上昇、今後の見通しについて考えていきます。


1.2021年前半の首都圏新築マンションは好調

新築マンションの好不調は、「売り出した物件が売り出した月のうちに売れた割合」の率が70%を超えるかどうかで判断されることが多いのですが、首都圏では、この割合が2021年1月以降70%前後で推移しており、現在は好調といって良いでしょう。

また、直前12ヶ月の各月平均発売価格の平均と直前12ヶ月の累計戸数を求め、それぞれを約10年前の2011年1月を100として計算すると、2021年10月の価格は137、発売戸数は71となっており(図表1)、供給戸数は減少傾向にある一方、価格は上昇傾向が維持される状態が続いています。

2.エリア別の動向には違いが生じている

(1)発売戸数は回復基調

首都圏の新築マンションの発売戸数は全体的には回復基調にあるが、エリア別の動向には違いが生じています。長谷工総合研究所によると、エリア別の2021年上半期の首都圏新築マンションの発売戸数は、「東京23区」が5,816戸(前年同期比+51.3%、2019年同期比+6.4%)、「神奈川県横浜市・川崎市」が2,339戸(+107.2%、+17.5%)、「千葉県その他」が1,193戸(+73.1%、+53.5%)とコロナ禍前を上回りました。

一方で、「東京都下(23区以外)」は963戸(前年同期比+26.5%、2019年比▲24.8%)、「神奈川県その他」は1,227戸(+188.7%、▲8.2%)、「埼玉県さいたま市」は465戸(+194.3%、▲45.0%)、「埼玉県その他」は838戸(+146.5%、▲25.8%)、「千葉県千葉市」は436戸(+207.0%、▲28.6%)と、供給量がコロナ禍前より少ないエリアが多くなっています(図表2)。

好調である「東京23区」、「横浜市・川崎市」の発売戸数が首都圏全体に占める割合(2021年上期)は61%を占めており、首都圏全体の回復をけん引したと言えます。また、「千葉県その他」は、比較的価格水準の低いエリアの中で選好され、需要を引き付けたと見られます。一方、2019年の水準を回復していないエリアでは、コロナ禍に関係なく、元々2019年末から減速傾向が強かったと思われます。

(2)価格は上昇が頭打ちか

平均発売価格は、「埼玉県さいたま市」(5,512万円、前年同期比+12.5%、2019年同期比+5.9%)、「神奈川県その他」(4,994万円、+6.3%、+4.7%)の2エリアでは前年同期比、2019年同期比とも上昇、「東京23区」(8,041万円、前年比▲1.8%、2019年同期比+5.2%)、「千葉県その他」(4,637万円▲0.6%、+12.5%)の2エリアでは前年比で減少、2019年比では上昇となりました。

一方、「東京都下(23区以外)」(5,338万円、▲1.1%、▲4.4%)、「千葉県千葉市」(4,255万円万円、▲5.8%、▲14.0%)の2エリアでは前年同期比、2019年同期比とも下落しました(図表3)。

「埼玉県さいたま市」は供給量が少なかったために価格が高まったという側面があるものの、「神奈川県その他」とともに価格上昇幅がかなり大きく、供給面からの一時的な価格上昇ではなくエリア全体の魅力が上がり、それに伴い価格水準が上方修正されている可能性が高いと思います。

また、「東京23区」では既にかなり高水準の価格となっており、そのエリアで購入希望ではあるものの、高すぎて購入できない人が増えて、需要が低迷している可能性があります。

ローン審査において、ローン返済に充当できるのは年収の30%程度であると言われています。他の借入がなく、借入条件を(1)金利は1%、(2)返済期間は35年と設定すると、借入可能額は、世帯年収500万円の場合は4,420万円と「千葉県」の新築マンションの現在の価格に近く、同様に1,000万円の場合は8,850万円と東京23区の現在の新築マンションの価格に近くなります(図表4)。

住宅購入にあたっては、マンション自体の価格に加えて少なくとも500万円程度の諸経費も必要になるので、新築マンションを買うときには、購入価格を全額借入で対応するにしても、こうした諸経費用に、ある程度の自己資金が必要になります。

しかし、厚生労働省と東京都の公表データによると、年収1,000万円以上の世帯が全世帯に占める割合は、全国で12%、東京都で19%しかいません(図表5)。住宅の購入資金用の資金は給与以外にも親からの支援等もあるかもしれないので、実際に購入可能な人はもう少し多いはずですが、首都圏のマンションは価格の上昇により、誰でも買えるわけではない高い水準となってしまっているようです。

3.今後の見通し

マンションの販売は、これまでの過去の実績から見ると、住宅取得控除の期日直前の12月と、転勤・転居の多い3月の売行きが良く、下期に減速することはあまりありません。2021年通年の供給見込みも、長谷工総合研究所によると約3.5万戸(前年比+28.5%、2019年比12.0%)と良好に推移する見込みです。

さて、新築マンションの今後の価格見通しですが、これまで新築マンションの価格の大きな下落は、バブル崩壊のあった1990年から1995年ごろなど限られた期間でしか起こっておらず、価格の上昇に頭打ち感はありますが、大きな価格下落は考えにくいでしょう。

現状、価格が高すぎて需要が減少し、販売計画が遅れていると思われるマンションも一部エリアで出てきています。しかし、そうした場合、マンションがあるエリアでの新築マンションは、マンション販売業者が供給量を減らして価格を維持する可能性があり、全体的な傾向としては、首都圏新築マンションの価格は、当面は引き続き緩やかに価格上昇し、高い水準が続くのではないでしょうか。

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