開店40年 「もぐらの床屋」きょう営業に幕 長崎の山下さん夫妻「悔いなし」 笑顔で客見送る

40年以上はさみを持ち続けた山下さん夫妻=長崎市五島町、もぐらの床屋

 約40年にわたり長崎市五島町で営業してきた「もぐらの床屋やました」が26日で店を閉じる。理容師の山下朝行さん(77)、美佐代さん(75)夫妻はこれまで通りのサービスに感謝の言葉を添え、閉店を知ってひっきりなしに訪れる数十年来の常連客とあいさつを交わしている。
 1979年、朝行さんが東京や福岡での修業を経て同市栄町のビル地下に1号店「ヘヤーブティックやました」を開業。隣の美容室にばかり客が流れるのは屋号のせいだと考え、立地や語呂の良さを踏まえて一目で理容業と分かる現屋号に改めた。
 やっと構えた店は3年足らずで長崎大水害に見舞われ、厳しい時代も経験したが、一時は市内に4店舗を構えるほどに。「はさみの音が『シャッキン、シャッキン(借金)』と聞こえた時もあった」(朝行さん)。カット技術の高さやオリジナルの「南アフリカパーマ」などが評判を呼び、政治家や財界人も多く出入りするようになった。美佐代さんは「外に出ることがないから、お客さんがいろんな話をしてくれて面白かった」と懐かしむ。
 ビルの老朽化をきっかけに、年齢も考えて閉店を決意したのは夏ごろ。第二の人生は20年前に始めた農業に本腰を入れる予定。「悲しい気持ちより、悔いなし! といった思い」と朝行さん。最後まで柔和な笑顔で客を見送り、年の瀬にはさみを閉じる。


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