オミクロン株、冷静な対応を 獨協医大・増田教授に聞く

増田道明教授

 南アフリカから初めて報告された新型コロナウイルスの新たな変異株が「オミクロン株」と命名され、約1カ月が過ぎた。市中感染が各地で確認される中、獨協医大の増田道明(ますだみちあき)教授(ウイルス学)は「感染力は上がっているが、デルタ株より毒性が強いというデータはない。冷静な対応が望まれる」と呼び掛ける。一方「感染者が急増すると医療体制が逼迫(ひっぱく)し、重症患者の治療が困難になる」と懸念。ワクチンも「感染予防効果の過信は禁物」として、年末年始の帰省時にはマスク着用など感染対策を訴えた。

 オミクロン株はデルタ株以上に感染力が強く、従来の変異株と比べて変異の数が多い。増田教授は「変異が増えるまで発見が遅れたか、他のウイルスとの組み換えが起きた可能性がある」と説明する。

 南アフリカでは、デルタ株と比較して入院や集中治療を要する割合は少ないとされる。英国でも重症化の頻度は低く、鼻水や頭痛など風邪と同様の症状が報告の上位を占める。ただ、増田教授は感染者が爆発的に増えると重症者の絶対数が急増する危険性も示唆。「まん延は避けられないとしても、感染拡大のスピードを抑える努力は意義がある」と話した。

 ワクチンの効果については、2回接種のみでは「かなり弱まることが報告されている」と指摘。重症化予防には「一定の効果があるかもしれない」としつつ「3回目を接種しても感染予防効果を過信するべきではない」とした。

 年末年始で帰省する人には「ワクチンを接種したから感染源にならないと思い込むのは危険」と話す。高齢者や持病のある人など重症化リスクが高い人と会う際は「特に感染対策に気を使ってほしい」と求めた。

 「過度に恐れる必要はない」とも強調する。「急激な感染拡大は避けるべきだが、発熱など症状がない限り帰省を諦めたり自宅に引きこもったりする必要はない」。科学的知見に基づかない「風評」の懸念にも言及し「ウイルスより人間の方が怖いという社会をつくらないことが大切だ」と訴えた。

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