上越新幹線の今とこれからの課題とは【上越新幹線開業40年目へ向けて】

上越新幹線(新潟ー大宮)は、来年11月15日で開業から節目の40周年を迎えます。

先日10月1日には、国内唯一のオール2階建て新幹線「E4系Max」が、多くの方に惜しまれラストランを迎え、何かと話題に上がる事が多い上越新幹線。

最近では、全国初の営業用車両を用いた自動運転試験も上越新幹線で行なわれ、注目を浴びました。

「E4系Max」は、1997(平成9)年に東北新幹線でデビューをし、2001(平成13)年に上越新幹線でも運行をはじめ、新潟⇄東京を約20年もの長き間、多くの人を乗せて駆け抜けました。

E4系引退の理由としては‥‥⚪︎車両の老朽化 ⚪︎高速化問題 ⚪︎バリアフリー化

など、様々な事情が引退の理由です。

当初、上越新幹線には順次、北陸新幹線で運用されている「E7系」を導入し、E4系は2020年度中に廃止の計画でした。

しかし、2019年秋。台風19号による、長野新幹線車両センター(長野市)浸水被害の影響により、E7系が大量に廃車となり、上越新幹線で運用を予定していたE7系を北陸新幹線に充当。

それに伴い、上越新幹線の車両不足を補うため、E4系の引退が延期されましたが、ついに今年10月1日に多くの方に惜しまれ、引退しました。

沿線住民の足として活躍したのはもちろんですが、仕事・観光やウィンターシーズンなど、様々な需要に合わせて、大いに活躍したのは間違いないでしょう。

また、昨年2020年12月には、「黒い新幹線」「世界最速の美術館」として、斬新な外観とインパクトで有名であった、「現美新幹線」の定期運行が終了したのも記憶に新しいです。

その圧倒的な姿が、インスタ映えすると老若男女関わらず、多くの方々に人気を得ていました。

2016年4月から、上越新幹線 新潟ー越後湯沢間にて、土日を中心に臨時列車として運行開始した「現美新幹線」。

秋田新幹線と東北新幹線で走行していた「E3系」を改造し、姿を大きく変えて、上越新幹線を駆け巡り、運行開始から4年8ヶ月という短い時間の運行でしたが、新潟県の鉄道・観光業界に貢献しました。

車両自体も魅力的でしたが、新潟の「四季・自然・山・海・川」、色とりどりの素晴らしい景色を見せてくれる、上越新幹線沿線を走る事も魅力でした。

上越新幹線開業40年の歴史は、壮大で簡単には言い表せません。

車両に限って振り返ると、ここ最近だけでも魅力的な列車が多く走り、鉄道ファンのみならず、多くの方を楽しませてくれました。

⚫︎新潟県内を走る、上越新幹線の現状⚫︎

上越新幹線は東京ー新潟間 333・9km、約2時間の距離であり、他の新幹線路線に比べて、比較的に短い路線です。

日本中を駆け巡る新幹線は、どの路線も終点に向かって乗客が減少し、自由席・指定席共に空席が目立つ状況が目立ちます。(東海道新幹線は山陽新幹線と直通運転をしているため、例外‥)

現在、新型コロナウイルス感染拡大防止による、移動自粛のため、各新幹線は乗客が大幅に減少し、各鉄道会社が新しい戦略を練って、利用客アップへと繋げているのです。

ここで、移動自粛以前の上越新幹線旅客動向を、少し振り返ってみましょう。

通常期、東京から新潟へ向かう際、大宮駅を過ぎると満席状態となり、高崎駅では多くの出張客や通勤客が下車し、乗客も半分近くに減少する旅客動向が一般的です。

ウインターシーズンには、車内はスキー板やスノーボード板など、大きな荷物を持った「インバウンド(訪日旅行客)」の姿を多く見掛けますが、そのインバウンド客も、多くが越後湯沢駅で下車し、新潟駅に向かって乗客が減少します。

また、長岡駅・燕三条駅から新潟駅までは、新幹線通勤・通学利用者で自由席は賑わいますが、指定席は閑散としている状況です。

土日や年末年始などの繁忙期に関しては、旅客動向変わりますが、これが新型コロナウイルス感染拡大防止による、移動自粛以前の上越新幹線旅客動向でしょう。

⚫︎これからの上越新幹線の課題⚫︎

「越後湯沢駅で降りる、インバウンド旅行客をどうやって、先(新潟方面)に乗車してもらうか?」

これこそ、『新潟県内を走る、上越新幹線の課題』ではないでしょうか。

東京駅から越後湯沢駅までの所要時間は、約1時間15分(営業キロ199・2km)

大宮駅からですと、1時間も掛からない時間(営業キロ168・9km)で到着し、首都圏からの近接性・立地性は優れています。

越後湯沢駅周辺は、インバウンド旅行客に限らず、キャンプ・トレッキング、ウィンタースポーツなどのアウトドアが楽しめ、年間を通して多くの観光客が訪れる、言わずと知れた人気スポットです。

毎年夏には、「フジロックフェスティバル」などの大型イベントも開催され、駅周辺をはじめ、町全体が賑わいます。

逆に、越後湯沢駅から新潟駅までは、時間的に約50分(営業キロ 134・7Km)と、意外にも首都圏に向かうよりも短いのです。

首都圏から越後湯沢に訪れる方の多くは、その周辺でイベントやアウトドア、ウィンタースポーツなどを完結し、首都圏などへ向かう例がほとんどでしょう。

実際に、私が東京に住んでいる時に知人から聞いた話ですが、「越後湯沢には、ウィンタースポーツやフジロックで何度も訪れているが、その先(新潟方面)には一度も行った事がない!」と言っていたのも事実です。

「越後湯沢から先は、東京から遠い!!」というイメージが、首都圏の人には定着しているのでしょう。

その為にも、「観光客を呼びつける目玉の列車」「上越新幹線を走る観光列車」が必要不可欠であると感じます。

今後、現美新幹線に変わる、「新潟県内の上越新幹線を走る観光列車」の予定は残念ながら、今のところ耳にしません。

観光列車は、地域の活性化の一役を担う事は確かであり、観光・鉄道業界だけでなく、それに関連した多くの業界が盛り上がります。

新幹線だけに限らず、在来線各線にも魅力的な観光列車が多く走る新潟。

観光列車を観光素材として、今まで以上に活用し、新潟の観光・鉄道業界、そして様々な業界が盛り上がって欲しいと願います。

その為にも、新型コロナウイルスの早期終息を願うばかりですね‥‥。

【著者】GATA_TETSU

首都圏某ターミナル駅で駅係員として、10年間勤務。 窓口で切符の販売や改札業務、管理職へ昇進後は新人指導や後方業務にも携わる。 地元・新潟県へUターン後は、趣味の鉄道と鉄道業界での経歴を活かし、「新潟初!元鉄道マン!~GATA_TETSU~」として活動中。 各種SNSをはじめ、鉄道写真撮影・鉄道講演などを通じ、新潟&鉄道の魅力を発信している。

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