読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、7歳のお子さんを持つ45歳会社員の夫。できるだけ早くFIREを実現したいといいますが、投資の目標金額や方針、子どもの教育費のマネープランをどう組んで行けばいいでしょうか? FPの伊藤亮太氏がお答えします。
セミリタイアを考えています。ただ目標金額をいくらに設定すれば良いかわかりません。貯蓄と投資の割合や娘の教育費など、今後のプランを一緒に考えて欲しいです。
会社に縛られないFI(Financial Independence=経済的独立)を出来るだけ早く達成したいです。RE(Retire Early=早期退職)は、そこまでどうしてもという感じではありません。住宅ローンも先日払い終わり、娘がまだ小さいので今のうちに出来る限り投資に回したいと思っています。
試算では、手取り年収630万円、生活費が360万円、差額270万円となります。2022年は住宅ローンの返済も終わったので毎月30万円を投資信託に回し、年間で足りない生活費90万円は貯蓄から切り崩す予定です(妻のパート代を入れれば切り崩す額も少なくなります)。
●2022年の投資信託の割合
・娘のジュニアNISAで80万を全世界株式。
・自分は一般NISAで全米、全世界、NASDAQ連動型に均等投資、特定口座で毎月5万円を全世界、先進国、新興国、日本株式に投資。
・妻はつみたてNISAのフル活用と毎月5万円をSP500連動の投資信託に投資予定です。
※全体では、全米:先進国:日本:新興国を7:1:1:1にしています。
※保険(貯蓄)、企業型DCはリスク少なめのため、NISA含めた投資はインデックスではありますが、現在の投資額は少ないのでリスク高めでも許容できると判断しました。
【相談者プロフィール】
・男性:45歳、会社員
・妻:46歳。パートを始めました。月間6万円くらいになりそうです。
・子どもの年齢:7歳
・住居の形態:持ち家(マンション・関東)
・毎月の世帯の手取り金額:40万円
・年間の世帯の手取りボーナス額:150万円
・毎月の世帯の支出の目安:30万円
【毎月の支出の内訳】
・住居費:2万5,000円
・食費:6万円
・水道光熱費:1万円
・教育費:1万円
・保険料:5万円
・通信費:8,000円
・お小遣い:2万円
・その他:10万円程度 。2021年12月からローンがなくなるのと、海外赴任から帰国し色々お金がかかり月の生活費が把握できてませんが、娯楽費含めてもローンがなくなったので、毎月の世帯の支出は30万円以下になると思います。車は持っていません。
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:0円
・ボーナスからの年間貯蓄額:0円
・現在の貯金総額(投資分は含まない):2,000万円
・貯蓄性保険に毎月5万1,300円、50歳まで払込 (死亡時1,500万円、現在約600万円)
・現在の投資総額:投資信託 200万円、企業型DC 350万円(毎月5万5,000円。割合はGPIFに準ずる)、会社の持株会 250万円程
・現在の負債総額:0円
伊藤:ファイナンシャル・プランナーの伊藤亮太です。回答させていただきます。
まず、一般論から申し上げますと、年間支出の25倍の資産を持つことでFIREは可能と言われています。年4%の利回りで運用できるというのが前提です。
投資方針には賛成
米国主体の投資運用をお考えですので、年4%の運用利回りは過去の状況を見る限り可能瀬はあります。もちろん、将来は保証できません。今後米国も人口増加率が逓減していく可能性があり、これまでのようにはいかない可能性もあります。とはいえ、世界の経済成長率は年3%程度であり、米国も年2~3%程度の成長は十分今後もありえるでしょうから、米国に投資軸を置く点は私も賛成いたします。
FIREの目安となる金額は?
さて、ご相談者の場合、年間での生活費が360万円であるため、360万円×25倍=9,000万円の運用資産があればFIREが可能といえます。自宅は運用資産と考えず、単純に貯金も含めて運用可能な資産と考えると、残り6,450万円ほどの資産構築が必要になります。
仮に毎月30万円(年360万円)を投資信託で運用し、年4%の運用利回りができたと考えます。一方、生活費の不足分90万円のうち、奥様のパートから年間60万円をカバーできるとして考えると、30万円を貯蓄から取り崩す試算となります(奥様のパート代はあえて運用には回しておりません)。
15年後、60歳前後でのFIREが現実的
簡単な試算をしてみましょう。年360万円を年4%で毎年運用しながら積立てていくと、15年後には7,208万円となります。また、現在運用されている確定拠出年金等も年4%で運用できるとすると、15年後には990万円になっている試算です。これらの合計およそ8,200万円から毎年の貯蓄取崩額30万円×15年を差し引くと7,750万円となり、6,450万円以上の資産構築ができています。
年3%ではどうでしょうか。同様の計算を行うと、15年後には7,105万円となり、このケースでも6,450万円以上の資産構築ができています。
そのため、一つの目安ですが、15年後をFIREの目安とされてみてはいかがでしょうか?もちろん、さらに早くFIREを達成したいということであれば、年5%や6%を目指す方法も考えることはできますが、その分リスクも高くなります。そのため、15年が無難と考えます。結局60歳になるため、これでは遅いとお考えの場合には、受け取ることができる退職金も考慮して55歳目標(10年後)なども可能ではあります。ただし、お子さまがちょうどその頃に大学進学も迎えることになるでしょうから、そうした教育資金が必要になることも考慮すると、やはり60歳前後のリタイアが無難かと思います。
保険の金額は教育費に相当
なお、保険は貯蓄と考え、運用金額や上記の試算部分には入れておりませんが、仮に月5万円、年間60万円として15年後には今の保険料支払総額も考慮すると、1,500万円ほどになります。教育資金がどの程度かかるかにもよるものの、一般的な大学進学であれば1,500万円あればそれまでの教育費はまかなえると考え、相殺して検証しました。この部分は運用を前提としておりません。
リタイア時期を早めることは可能だが、欲張らずに
今の世の中、70歳前後でも働いている人は多くなっており、60歳でFIRE実現でも私は早期リタイアと考えます。無理のない、着実な資産形成がよろしいかと思います。もし、運用がうまくいき、年5~6%のリターンが見込めるといった場合には、さらにリタイア時期を早めることは可能です。とはいえ、欲を出して運用で失敗しては元も子もありませんし、この試算でも十分リスクはとっています。株価が大きく下がるなどチャンスと思われる際には、前倒しして買い増しをするなどの検討はあってよいと思います。また、投資信託の場合、信託報酬といった経費がかかりますので、その点も考慮しなければなりません。この他、半年に一回程度見直しをすることも忘れないでください。
あとは実行するのみです。是非計画的なFIREを実現してください。