再び急拡大

 風邪ひかないようにね、と例年ならば家庭で、職場で、よく言われる頃だろう。きのうは二十四節気の「小寒」(寒の入り)で、これから節分までの「寒の内」は一年で寒さが最も身に染みるとされる▲「風邪って何の役に立つの?」。もしも小さな子に聞かれたら、どう答えよう。〈風邪を引くいのちありしと思ふかな〉後藤夜半(やはん)。いつもは忘れがちな健康のありがたさを知るためだよ。差し当たり、こう答えるだろうか▲〈いのちありし〉。風邪をひいてこう思えるのも、生命に関わらない程度だからであって、重度ならばそうも言えない▲では「新型コロナって何の役に立つの?」と聞かれたら…と想像してみて答えに詰まる。国内で感染が初めて確認されてからもうすぐ2年。健康の意味を知るどころか、続々と押し寄せる波に身をすくめ、先の読めない不安に覆われてきた▲国内でまたも感染が急拡大している。本県できのう確認された数は、80日ぶりに10人以上になったが、勢いはしばらく増すとみられる。とうとう第6波か、と松の内から身構えを怠ることができない▲俳号を「変哲」と称した小沢昭一さんに一句がある。〈寒風へ頭を槍(やり)にして進む〉。確かに、今時分はこんな歩き方になる。寒さと不安に包まれた寒の内の、心の引き締め方にも読める。(徹)

© 株式会社長崎新聞社