妻の病気で育休後にシングルインカムになるかもしれない夫婦。教育費は大丈夫?対策は?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、育休中の28歳、公務員の女性。0歳の子どもがおり、現在は公務員の夫も育休を取得中。ただし、妻は病気のため復職できるか未定とのこと。今後、シングルインカムになる可能性がある中、教育費は賄えるでしょうか? どのような対策が必要でしょうか? FPの當舎緑氏がお答えします。


28歳、公務員です。0歳児がおり、現在育児休業中です。また、疾患を患っており、仕事が出来ない状態です。育児休業終了後(2年後)に仕事復帰を希望していますが、身体の状態が悪く就業は難しそうです。

現在は夫も育児休業中で、収入は育児休業給付金のみです。育児休業中のため、ボーナスがなく、特別費積立(被服や車検代など年70万円程)や子どもの出費が多くかかり、赤字家計になりそうです。

半年後に夫は仕事復帰しますが、一馬力になってしまいます。今後必要になるであろう、子どもの教育費や夫婦の老後資金についてどのような対策をすべきか相談したいです。

夫の復職に伴い、保育園に子どもを入園させる予定です。その場合、月に6〜7万円保育料がかかります。なお、病気がよくなった場合に仕事復帰(もしくはパート)をし、第二子を希望しています。

【相談者プロフィール】

・相談者:女性、28歳、公務員(育児休業中、病気のため復職未定)

・夫:40歳、公務員(育児休業中)

・子ども:0歳

・毎月の世帯の手取り金額:35万7,000円

夫/育児休業給付金25万円(月にならした額)、復職後の予想手取り月額34万円

妻/育児休業給付金10万7,000円(月にならした額)、復職後の予想手取り月額9万円

・住居の形態:賃貸(関東)

・年間の世帯の手取りボーナス額:130万円(夫復職後)

・毎月の世帯の支出の目安:23万5,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:10万円

・食費:5万円

・水道光熱費:1万5,000円

・通信費:8,000円

・車両費:7,000円

・お小遣い:3万4,000円

・その他:2万1,000円(医療費、日用品)

【資産状況】

・毎月の貯金額:6万8,000円(特別費積立3万円、車買い替え1万5,000円、保育料積立2万円、子どもの貯金3,000円)

・ボーナスからの年間貯蓄額:0円

・毎月の投資額:4万3,000円(つみたてNISA3万3,000円、ジュニアNISA1万円)

・現在の貯金総額(投資分は含まない):500万円

・現在の投資総額:60万円

・現在の負債総額:0円

・退職金:あり。現在2,000万円予定だが、減額されていくと見込まれる。

・財形年金:3,000万円

當舎:ご夫婦とも育児休業を取得されているとのこと。すばらしいことです。政府が「男性の育児休業取得」を推進しようと育児介護休業法の改正が予定されている中で、時代を先取りしたライフスタイルを経験されているともいえます。ただ、ご夫婦とも育児休業給付金を受給しているだけですから、収入が減額となるのは当然のこと。せっかくお二人とも育児休業中で、話し合う時間はいつもより多く取れるわけですから、しっかりと将来のライフプランを描いてみましょう。

継続は力なり!貯蓄は「いつまで」に「いくら」を具体的に考えよう

ご夫婦とも育児休業中で収入が減っていながら、毎月の貯蓄金額6万8,000円、毎月の投資額4万3,000円が継続できています。ただし、今はお子様が1歳で一番お金がかからない時期ですので、お小遣いや通信費、食費などを抑えられているからともいえます。今後はどんどん支出は膨らみますから、できれば少しでも復職して収入を増やし、ぜひこの貯蓄の習慣を続けていただきたいものです。

今後、改善すべきは、貯蓄額の振り分けの仕方でしょう。特別費積立、車買い換え、保育料積立と、費目ごとに分けて貯蓄していますが、このように費目ごとに貯蓄しているなら、目標時期と目標金額は決めていらっしゃいますか。例えば、車買い換えは1万5,000円の積立で、年間18万円。これを5年継続すると90万円、10年継続すると180万円となりますが、購入を5年後に考えているなら90万円では不足するはずです。今は収入が減っていますが、復職後のボーナスを含めて購入するのか、それともこの貯蓄額を頭金にしてローンを組むのかなど、しっかりと「いつまで」に「いくら」貯めて、「いつ」使うのかという計画を立てておきましょう。特別費積立を、車購入や旅行費用など、家族で楽しむための費用にするのもいいでしょう。

仕事復帰かパート就業か? 妻の就労プランがポイント

疾患をわずらっているということで、仕事を退職、もしくはパートを希望されていますが、いずれにせよ、今後の家計の選択肢は、収入を増やすか、支出を減らすかのどちらかです。

収入を増やすための選択肢の一つとして、今の公務員としての立場で仕事が継続できないか、考えてみてはいかがでしょうか。労働人口が減少する中では、パート社員でも責任ある仕事を任されることも増えていますし、転職をしたことで、体への負担が必ずしも楽になるとは限りません。

せっかく、今の公務員という立場があるのですから、比較的負担の軽い部署などへの配置転換を希望するのはいかがでしょう。第2子も希望されていますので、このまま、産休や育休になっても転職前の方が申出をしやすいでしょう。ご夫婦で公務員の共働き家庭は、最も強いダブルインカムのご家庭といえます。コロナ禍でも、失業や減収などの影響も受けない、いわば安定している立場です。

ただ、専業主婦になる、あるいはパート勤務にするという意志が固いのであれば、妻の収入が減ることによるリスク管理を考えましょう。今は夫婦二人とも収入があることから、保険の必要性は低いかもしれませんが、今後、夫一人の収入をメインとするなら、死亡保障や医療保障など、リスクに備える保険加入を検討する必要があるでしょう。

投資商品で教育資金を準備するときの注意点

今、毎月投資されているNISAとジュニアNISAの合計4万3,000円を15年間続けると、総額774万円となります。医学部や薬学部という医療系や、大学院への進学を前提としないなら、1人分の大学進学費用が十分まかなえる金額となります。

ただ、教育資金としてNISAを利用して準備している場合の注意点があります。NISAは投資信託で、子どもの教育費として必要な時に必要な金額を現金化できるかどうかを確約できない商品です。推薦で決まった時、受験費用、滑り止めに大学に納める入学金など、教育費は予想外に早めにお金が必要となることもあります。できれば、高校2年生、もしくは高校3年生の初めまでに準備できるように想定しておきましょう。

2人目の出産を考えたときの教育費は生まれる前からじっくりと!

その他の注意点としてですが、子ども用の貯蓄としての月3,000円は何のために使うのかをはっきりさせましょう。NISAは第1子のための教育費にし、今後検討している第2子のための大学進学後の学費ということであれば、3,000円と児童手当1万5,000円、保育積立を足して、学資保険などの商品を検討するのもいいかもしれません。

学資保険の貯蓄としての役割は、物足りないと思われる方も増えていますが、必要な時に必要な金額が受け取れるという役割で言えばぴったりの商品だと言えます。投資と考えるのであれば、年払いや一時払い、10歳や12歳など、早めに支払いを終えることができれば、少しでもお得度を上げることはできます。

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