本塁打王「ラオウ」も効果実感 元米マイナーリーガー考案、最適スイング習得バットに球界熱視線

たる型の重りをグリップ上部に取り付けた「バレルバット」(上)。下は通常のバット

 横浜市都筑区で野球スクールを営む元米マイナーリーガーが考案したトレーニングバットに、球界から熱い視線が注がれている。最適なスイング軌道を習得することに主眼を置いたバットで、2021年シーズンのパ・リーグ本塁打王に輝いたオリックス・バファローズの杉本裕太郎選手(30)を指導する中で生み出された。効果が実証された形で、プロ、アマ問わず関心を集めている。

 トレーニングバットを考案したのは根鈴雄次さん(48)。日大藤沢高を中退し、その後都立高から法大に進んだ。パワフルな打撃で活躍し、2000年に渡米。26歳でエクスポズ傘下のマイナーリーグに所属した。メジャー昇格はならなかったが、その後もメキシコやカナダなどのリーグで息長くプレーし、12年に現役を退いた。

 培った打撃理論を生かし17年に同区荏田南町に「アラボーイベースボール 根鈴道場」を開設、地元の子どもたちのほか、プロやアマ選手らに幅広くアドバイスしている。

 トレーニングバットは長さ約90センチ、重さ約1500グラム。通常の練習用バットより5センチほど長く、重量は1.5倍を超える。バットを握る部分の上部に重りを付けることで、重心が先端でなく手元付近にあるのが特徴。根鈴さんは「体に巻き付けて振り抜くイメージをつくりやすいようにした。反復して振り続けることでスイング軌道の矯正につながり、強いライナー性の打球を飛ばせるようになる」と解説する。

 重りの形状がバレル(樽(たる))型なことに加え、ヒットになりやすい打球角度「バレルゾーン」で捉える狙いから「バレルバット」と名付けた。

 バレルバット誕生のきっかけは18年末、打撃不振に悩んでいた杉本選手が球団関係者を通じて知った根鈴さんの道場の門をたたいたことだった。杉本選手は神奈川新聞社の取材に、当時の心境を「何かを変えなければ駄目だという気持ち。変化を恐れず、根鈴さんを信じてとことんやってみようと思った」と話す。

 根鈴さんも自らの野球人生に重ね、苦境からはい上がろうとする杉本選手のひたむきさに共鳴。打撃開眼に適した道筋を模索する中で、バレルバットにたどり着いた。

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