遺伝子操作した豚の心臓を患者に移植 米で初の成功例発表

 米メリーランド大学医学部は10日、末期の心臓病患者に、拒絶反応が起きないよう遺伝子操作を施した豚の心臓を移植する手術を実施し、術後3日間の現在まで安定していると発表した。ヒト以外の心臓を移植する「異種移植」の事例はこれまで数例あるが、遺伝子操作した生物の心臓を移植した事例は初。世界的に臓器移植待ちの患者が数多くいる中、光明となるか注目される。

末期の心臓病患者、人工ポンプも適応できず

米食品医薬品局が緊急認可

 同大学が発表した内容によると、手術を受けたのは57歳の男性患者。年末に入院し末期の心臓病と診断され、一時的に人工心肺装置(ECMO)に接続され寝たきりの状態だった。適合するドナーの心臓もなく、人工ポンプにも適応できないことが分かり、医療チームは規制当局である米食品医薬品局(FDA)に異種移植の緊急許可を申請。認められたことから、拒絶反応が起きないよう遺伝子操作された豚の心臓を移植する手術を行った。手術に際しては、免疫を抑制し、拒絶反応を起こしにくくする別の新薬も投与されている。

 今回の発表は、これまで課題とされてきた移植臓器の拒否反応を克服する新たな手法である「遺伝子操作した臓器」の効果の可能性を示すものでもあるが、本当にこれが治療として有効かどうかは、今後患者が安定した状態でいつづけられるかどうかにかかっている。なお米政府の統計によると、現在約11万人のアメリカ人が臓器移植を待っており、毎年6千人以上の患者が移植を受ける前に亡くなっている。

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