「動物に優しい町」目指しNPO設立 犬のトレーニング教室運営 佐世保の藤川さん

「動物に優しい町づくりをしたい」と話す藤川さん=佐世保市内

 長崎県佐世保市里美町で犬のトレーニング教室などを運営する藤川勇さん(42)が、動物と人間の共生社会を目指すNPO法人「Human ― Animal Welfare」を設立した。藤川さんは「日本が動物福祉の先進国になるよう尽力したい」と意気込みを語る。

 藤川さんは愛媛県出身。高校卒業後、世界を放浪する旅に出た。23歳から2年間、畜産を学んだ米国ではカウボーイとして馬を乗りこなし、犬と一緒に牛を追った。こうした生活の中で、動物との共生を意識し始めたという。
 帰国後、知人の紹介で長崎県を訪れ、2007年に犬のトレーニング教室を開設。翌年から動物愛護運動を始め、海外の動物保護団体や保護施設を視察、人と動物の関係に関する国際会議に出席するなどして知見を深めた。
 「日本でも動物に優しい町づくりをしたい」。動物愛護にかかわるうちにそうした思いが芽生えた。長崎県の犬猫の殺処分数が全国最多になったことや新型コロナウイルス禍でペットを飼う人が増えたことなどもこの思いを強く後押しした。さまざまな意見を取り入れようと市内外の塾講師やウェブデザイナーら7人に声を掛け、昨年11月にNPO法人を設立した。
 藤川さんによると、日本ではペットと暮らす世帯は全世帯の約3割。ペットの犬猫の総数は約1600万匹に上ると推計されている。それにもかかわらず「人と動物が共生する上で必要な社会インフラの整備が十分ではない」として、災害時の対応を例に挙げる。
 佐世保市の場合、3カ所のコミュニティセンターに「ペット避難所」を設置することになっている。ペットをケージに入れて指定された場所で管理するか、屋外でリードなどにつなぎ管理する「同行避難」だが、「それでは台風、地震時などに動物の命を守れない」と藤川さん。「ペットも飼い主と同じ空間で避難する『同伴避難』が必要」と訴える。
 また、夜間や救急対応ができる動物病院が少なく、ペットと一緒に利用できる宿泊施設や飲食店も限定的だ。そこで、子どもの頃から動物福祉について学ぶ環境を整え、地域のコミュニティセンターで災害時の同伴避難を可能とする。動物愛護センターで夜間診療ができて、飲食店、ホテル、公共交通機関をペットも利用できるようにする-。そんな町を目指すという。
 そのために、まずは「動物に優しい町づくり」をする「宣言」の採択を行政に求める署名活動を展開するつもりだ。動物福祉の啓発のため、親子を対象としたイベントも計画している。
 藤川さんは「ペット可の範囲を広げれば地域経済の活性化やUターン、Iターンも見込める。空き家対策の一つとしてペット可の物件にしてみるのもいいのでは」と話す。「人と動物を『一つの生命体』と捉え、人と動物、どちらの社会も豊かにする必要がある。人は動物のことを理解した上で持続的な活動を行う。そんな社会にしていきたい」と穏やかに語った。
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 同法人はペット可とした場合の状況調査に協賛する飲食店や商業施設を募集している。問い合わせは藤川さん(電0956.46.0535)。

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