いきなり「過去最多」

 一つの所にとどまらず、ただひたすら流れ、過ぎていく。清少納言は「枕草子」に「ただ過ぎに過ぐるもの」を並べた。〈帆かけたる舟 人のよはひ(齢) 春、夏、秋、冬〉▲このところ季節の足取りがひときわ速く、目まぐるしい。晩秋の昨年11月初めから、県内では新型コロナの感染者「ゼロ」が続いた。年の暮れ、交通機関は帰省する人の予約で埋まり、商店街も正月の支度をする客でにぎわっていた▲年が明けた頃、雲行きが変わる。県内で初めて新種オミクロン株の感染者が確認されてから、10日しかたっていない。早かれ遅かれ市中感染が広がると分かっていても、あっという間の「過去最多」に、どきりとする。県内できのう160人の感染が発表された▲第5波のピーク、昨年8月19日の114人をはるかに上回る。デルタ株を想定し、県が試算した第6波の1日当たりの最大数は170人。新種株の感染力のすごさに目を見張る▲このままでは仕事の現場で欠勤する人が増えたりと、社会の動きが滞りかねない。飲食関係などの経済活動も鈍りかねない。コロナ禍3年目、早くも正念場に入った▲3回目のワクチン接種が急がれる。冬から春へ、時は慌ただしく「過ぎに過ぐる」に違いないが、私たちは慎重に冷静に「正しく恐れる」構えを忘れまい。(徹)

© 株式会社長崎新聞社