成人式の年齢は?

 大人とは何だろう。語義の説明が味わい深い新明解国語辞典(三省堂)で「大人」を引けば〈一人前に成人した人〉とあり、さらにこう続く▲〈自分の置かれている立場の自覚や自活能力を持ち、社会の裏表も少しずつ分かりかけて来た意味で言う〉。人生の綾(あや)を語るようで、味がある▲遠い昔、成人した頃のわが身を思い起こせば、立場の自覚なし、自活能力なし、世間知らずがいっぱしの口を利く-と、辞典の「大人」にはまるで遠かった。今では各地の成人式が報じられるたび、頼もしい「新成人の誓い」に、ただ感じ入る▲この4月、成人年齢が18歳になる。何歳で成人式を開くか、総務省が市区町村に尋ねると「18歳」と答えたのはごくわずかだった▲「二十歳のつどい」といった名称で今の年齢のまま式典を開く自治体が圧倒的らしい。18歳の成人式は「受験と重なる」という理由が多い。受験や就職で頭がいっぱい、少し先のことも分からない。そんな18歳が成人式で高らかに希望や自覚を語る光景は確かに、思い描きづらい▲成人するとはどういうことか。高校生らが自発的に話し合う動きが全国にはあるという。〈人間ができるまで十七年か七十年かは人によりけり〉小池光。これからの成人も見上げたもので、遠い日の若き自分がまた小さく思えてくる。(徹)

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