偶然の一致?共通点の多い東武・西武の2ドア中距離電車

東武鉄道と西武鉄道、両社は同じ関東の大手私鉄の一角を担う鉄道です。前者の東上線と後者の新宿線等互いに競合しているエリアもありますが、それ以外はほぼ無関係であまり共通点はありません。ただ一つだけ両者を結ぶ共通点があります。この記事ではその両者の電車についての奇妙な共通点と、相違点について解説していきます。

似ているようで似ていない、少し似ている二形式

東武6050系

6050系電車は、東武鉄道と野岩鉄道、そして会津鉄道が所有している電車です。二両で一編成を組み、主に東武線南栗橋から北の区間と野岩鉄道線、そして会津鉄道線の電化区間で運用されています。2017年までは東武スカイツリーライン浅草駅から日光・鬼怒川・会津への行楽客を運ぶ快速列車としても運用されていました。

西武4000系

4000系電車は、西武鉄道が所有している電車です。4両で一編成を組み、主に埼玉県の西武秩父線と秩父鉄道線三峰口ー長瀞間でのみ運用されています。2020年までは西武池袋線池袋駅から秩父・長瀞・三峰口への行楽客を運ぶ快速急行としても運用されていました。

二形式の共通点と相違点

上記の通り少し概要を書いただけでもかなりの共通点が見受けられる事が分かります。ではここからさらに色々な部分の共通点と、塗装や先頭前面等の明確な違いを除いた、この二形式に共通しない点などを解説していきます。

製造出自

まずこの二形式は、どちらも既存の車両の車体更新名義で、他社私鉄への直通列車用車両として製造されています。東武6050系は東武6000系から、西武4000系は西武101系から走行機器を流用し、前者は当時まだ開通していなかった野岩鉄道線への直通列車用として、後者もやはり秩父鉄道線への直通用としてロールアウトしました。この時点ですでに共通点満載だったわけです。ただ製造年月は6050系の方が早く(1985年)、4000系はその3年後にデビューしています。

車内設備

上記からもわかる通り両形式は行楽輸送を目的として製造されました。なので当然車内の座席はボックスシートとロングシートが混在する所謂セミクロスシートの配置となっています。シートの色や形などは致し方ないとして、一見同じような座席配置のように思えますが、いざ座ってみると窓側にある明確な相違点が見えてきます。それはテーブルの形です。

西武4000系系は普通のミニテーブルなのに対し、東武6050系は折り畳みテーブルとなっており、必要に応じて展開することが出来るような構造になっています。この方式のテーブルは形こそ違えども同時期の特急車両にも採用されており、東武の優等列車に対するこだわりが垣間見えます。

しかし西武4000系のテーブルも、東武とは別の意味で「必須」のアイテムを仕込んでいます。上から見ると少しわかりづらいので下から覗いてみると・・・

ありました。「センヌキ」です。国鉄時代の急行列車などはよくこの栓抜きがテーブルの下についていたものですがこの西武4000系は昭和末期も末期1988年製造の車両です。国鉄全盛期ならいざ知らずすでに瓶飲料が衰退しはじめているこの時期にわざわざセンヌキを設置した本当の理由はよくわかりませんが、おそらく西武鉄道ではテーブルの下にはセンヌキをつける、というのがまだ常識だったのでしょうか?いずれにせよそういった意味でも西武4000系は昭和の香りを色濃く残した車両でした。

分割併合

導入当初から他社私鉄との直通を目的として製造された両形式ですが、途中で分割併合を挟む運用もありました。東武6050系快速急行は下今市駅で日光方面と鬼怒川・会津方面と、西武4000系快速は横瀬駅で三峰口方面と秩父・長瀞方面とでそれぞれ行っていました、特に後者は池袋直通便がなくなった今現在でも一部の普通列車で行われています。ですが6050系の場合は鬼怒川でさらに2両を切り離していたので、事実上の三階建て列車運用とも言われていました。

ジョイフルトレインへの改造

そもそもが改造車みたいな出自の両形式ですが、ここからさらにイベント用のジョイフルトレインに改造された編成も解説いたします。まずは6050系改造の634型電車、通称スカイツリートレインです。

東京スカイツリーの開業、及びそれに伴うとうきょうスカイツリー駅開業に合わせて、6050系完全新造車グループの内、二編成が改造されてできたのがこの列車です。形式名の由来はスカイツリーの高さ634mにちなんでおり、634とかいて「むさし」と読むそうです。北関東方面からスカイツリーへの観光客を運ぶための特急として一時期運用されていましたが、今では繁忙期の波動輸送がメインで特急列車から普通列車まで柔軟に運用されています。

続いてこちらは西武4000系改造のジョイフルトレイン、「52席の至福」です。

西武鉄道100周年の集大成として西武、並びに関東私鉄初のレストラン列車としてデビューしたこの列車は、1号車が多目的スペース、3号車がキッチン車両となったため座席は2号車と4号車にしかありません。その合計数が52席だった事からこの名前になったと言われています。形式名に大した変更はないのですが、一応52型、と区別されています。運行開始から一貫して土休日を中心とした専用のダイヤで運行されており、乗車するには専用の予約サイトから予約する必要があります。

二形式の行く末

さて、前回の6050系の記事でも同じことを書いたのですが、6050系は去年の時点で東武線や会津鉄道線からの撤退が報じられており、残る野岩線についても数往復のみしか残らない事実上の引退宣言を突き付けられています。西武4000系は2年前のダイヤ改正の際に池袋線飯能以東の区間から撤退してからは音沙汰がありませんが、他社でもほぼ同年代に製造された車両に置換の話が出ていますのでおそらく先は長くないでしょう。奇妙な共通点を持ったこの二形式、共に関東で活躍するのもあとわずかです。乗り納めはお早めに。(了)

【著者】ミシンロボ

日本全国の鉄道を「日帰り」で旅するライター。 日本全国の鉄道路線を完乗済みです。色々な鉄道の情報を独自の視点から発信します。

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