「制限緩和を」「仕方ない」 長崎県内 まん延防止開始 静まる繁華街、飲食業複雑

まん延防止等重点措置が適用され閑散とする繁華街=21日午後7時35分、長崎市本石灰町

 新型コロナウイルスの感染者急増を受け、長崎、佐世保両市で21日、2回目の「まん延防止等重点措置」が始まった。時短営業や酒類の終日提供自粛が求められ、夜になると両市の飲食店が並ぶ繁華街は人通りが消え、ひっそりと静まり返った。「認証店での制限緩和を」「仕方ない」-。関係者は今回の要請を複雑に受け止めた。
 同日午後8時前、長崎市浜町のラーメン店前。「またよろしくお願いします」。店主が申し訳なさそうに客を見送った。近くの銅座・思案橋の飲食店の多くは、重点措置期間の2月13日までの休業を伝える紙を貼り、通りに飾られたランタンは消えたままだった。
 「酒を出さないならお客さんは来ないし、リスクを負って開けられない」。あきらめ気味に話すのは、浜町でバーを営む50代男性。客足が遠のくのを見越して、20日から休業した。
 重点措置が始まった13都県のうち、感染対策の第三者認証を受けた店に限り、酒類提供ができるのは10都県で、判断が分かれた。本県は認証に関係なく、酒類提供の終日自粛と午後8時までの時短営業を両市の約4千事業者に要請。ワクチン接種証明で会食時の人数制限を緩和する「ワクチン・検査パッケージ」も適用しない。感染力が強い変異株「オミクロン株」の拡大とワクチン接種後でも陽性となるブレークスルー感染増加を受け、県は「より強い対策」への理解を求める。
 「努力して認証店になったのに(非認証店と)区別がないのは疑問が残る。でも、非認証店も資金面で投資が難しい店もある。業界全体として行政に窮状を訴えることが必要」。市内で居酒屋2店舗を経営する永石一成さん(38)は、県の方針に疑問を投げ掛けた。2店舗とも午後8時まで営業するが、認証店での制限緩和を訴える。
 佐世保市下京町の居酒屋「ささいずみ」。運営会社の酒見慎一朗社長は「お酒を出せないと、夜の売り上げは3分の1に落ち込む」とため息をつく。感染が落ち着いていた昨年11月中旬ごろから忘年会の予約が入るようになり、収益はコロナ前に比べ約7割まで回復。東京など、感染対策を取る店は酒類が提供できる自治体もあり「うらやましい」。県内の感染拡大状況は深刻だとして「長崎が厳しい対策をしたことは仕方がない」と理解を示した。
 この2年近く、感染の「波」のたびに、時短営業や休業を強いられ、落ち着けば客足が戻る日々の繰り返し。長崎市の飲食業者は「真面目な県民性なので、感染者が増えると客がすぐ減る。事業者は店を開けないことに慣れて、やる気がなくなり、閉店する人も少なくない」と悩みは深くなるばかりだ。


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