利用者らの差別的言動、予約へのクレーム… 長崎県のPCR検査協力で薬局に“風評被害” 県「偏見ないよう対応」

 長崎県の要請を受け、新型コロナウイルスの無料検査に協力している県内の調剤薬局が風評被害に遭うケースが複数起きていることが、関係者への取材で25日分かった。「PCR検査をしていると知っていたら来なかった」などと差別的な言動をする一般利用者や医療関係者がいるという。
 県は、感染への不安を抱える無症状の人を対象にPCR検査や抗原検査を今月7日から無料化。民間の検査センターのほか、43の薬局も協力している(24日現在)。
 長崎市内などで調剤薬局を経営する澤㔟瑞城さん(県薬剤師会理事)によると、無料検査で薬局は、利用者が採取した検体などを検査機関に提出している。多くの薬局が、屋外や車内で検体を採取してもらい、薬を受け取りに来た一般患者と出入り口を分けるなどして対応している。
 各薬局が感染対策に努めているにもかかわらず、佐世保市内の薬局を経営する男性は、利用者から「PCR検査をしていると知っていたら来なかった」、取引のある医療機関からも「検査をしている間は出入りしないでほしい」と心無い言葉を浴びせられたという。
 男性は「薬剤師としての責任を果たしたいとの思いで県の要請に応じたのに」と困惑する。一方、検査希望者が殺到して予約枠が埋まると、逆に「なぜもっと検査できないんだ」などとクレームも寄せられ「板挟み」の状態。県によると、取引のある医療機関から促され検査をやめた薬局もあるという。
 県内に調剤薬局は約700。うち県の要請に応じているのは6%にとどまる。澤㔟さんは「もっと多くの薬局が協力してくれたら風評被害や予約の混雑解消につながると思う」と話す。
 寺原朋裕県福祉保健部長は25日の記者会見で「県にも声は入ってきている。スティグマ(偏見・差別)がないよう対応していきたい」と述べた。


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