手取り月70万、ボーナス300万でも使い切ってしまう夫婦「どれも必要な出費」見直し方は?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、小学2年生のお子さんをもつアラフィフィの共働きご夫婦。月の手取りは70万弱、ボーナスは300万円もあるのに、ほぼ使い切ってしまい貯金が残らないといいます。見直せるポイントはどこにあるのでしょうか? FPの横山光昭氏がお答えします。


お金がなかなか貯まりません。毎月9万円ほどの黒字があるため、それを貯めているのですが、ボーナスで支払わなくてはいけないものが多く、せっかく貯めても残りません。

ボーナスで支払っているのは、住居のクリーニング・家具・家電等の買い替えなど(約30万円)、家族旅行(約50万円)、夫婦の互いの親への仕送り(計60万円)、年払い生命保険料(約100万円)、子どもの年1回払いの学校費用(約70万円)など。他に毎月の支出には含まないコートやスーツといった衣料品、PTAの活動費などを含めると年額300万円ほどのボーナスでは足りず、毎月から貯めているお金にも手をつけている状況なのです。

ボーナスの使い方を変えなくてはいけないとも思うのですが、不要だと思えるものはありません。毎月の収入からも無駄だ、不要だと思う支出は思い付かず、かつ子どものインターナショナルスクールの学費として積み立てている教育費が大きく、これ以上支出を減らすことは難しいと感じています。

老後資金も意識して貯めなくてはと思うのですが、夫は貯蓄目的の保険や退職金などでどうにかなるだろうと楽観的で、相談に乗ってもらえません。

不要な支出を見つけたり、支出の仕方を変えていく方法を知り、少しでもお金を残していけるようになりたいと思っています。ご指導お願いします。

【相談者プロフィール】

・相談者:47歳、会社員

・夫:51歳、会社員 ・息子(小2)

・手取り収入:月収67万3000円(相談者26万4,000円、夫40万9,000円)

年間賞与約300万円(相談者約90万円、夫約210万円)

・貯金額:約180万円

・毎月の支出の目安:58万5,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:14万8,000円(家賃、管理費)

・食費:8万8,000円

・水道光熱費:2万6,000円

・通信費:1万8,000円(スマホ3台)

・生命保険料:0円(年払い)

・生活日用品:1万8,000円

・医療費: 1万1,000円

・教育費:15万4,000円

・交通費: 7,000円

・被服費(クリーニング代含む):1万円

・交際費:0円(小遣いから)

・娯楽費: 2万8,000円

・小遣い:6万円(夫4万、妻2万円)

・その他:1万7,000円(新聞・NHK・理美容など)

横山:収入もしっかりありますが、支出も大きいですね。お子さんの学費はまだ長くかかっていきますから、毎月の支出だけではなく、ボーナスの使い道も検討したいもの。お金を貯めていくための手立てを考えてみましょう。

お金の使い方に軸を持つ

今の家計状況は、結果的に毎月の収入もボーナスも全て使い切っているような状況です。しかも不要だと思える支出はないとのこと。支払うことが当たり前になっていて、お金の使い方に軸が持てていないのではないかと感じます。

支払っている支出は、本当に必要な支出ですか? 今まで当たり前に払ってきたものを、疑って考えてみましょう。

どこから見ると良いかわからないとおっしゃる方も多いのですが、まず、毎月の家計の中で大事にしたい、優先したい支出はどれか検討してみましょう。毎月の支出としての優先度を検討できたら、ボーナスから支払うものについても検討することが必要です。食費なのか、教育費なのか、仕送りなのか、旅行費なのか。その上で、優先したい支出以外の支出を調整していくようにしてみましょう。

この支出の優先度を考えることが、お金の使い方の軸を持つことにつながります。自分は、家族は、どこにお金を使いたいのか。それを知ることが、お金の使い方だけではなく、生き方にも影響します。

まずは毎月の支出から削減できる支出を見つける

毎月の収入から貯蓄に回したい金額の目安は、手取り収入の6分の1。相談者様の世帯収入でいうと、11万2,000円ほどです。毎月あと2万円強ほど貯蓄に回せるようにしたいので、通信費などの固定費を中心に支出を見直し、削減を試みてみましょう。特に通信費は、お子さんの分も含めて3台で1万8,000円。大手キャリアのオンライン専用プランや格安業者のプランに見直すと、半額以下の負担に抑えられる可能性があります。ぜひ見直していただきたい支出の一つです。

次にボーナスの範囲で出費を抑えるように調整していく

また、せっかく毎月貯蓄しても、ボーナスで使ってしまえば意味がなくなってしまいます。毎月の収入の中で支出を抑えることがやりくりの基本です。ボーナス時期の支払いも、せめてボーナスの範囲で収まるようにしたいもの。できればもう少し頑張り、ボーナスからも貯蓄に回せるようになることが理想的です。

住居のクリーニング代、旅行代、仕送り、年払い生命保険料などで、過剰な支出になっているものはないでしょうか? 見直しや工夫で減らせるものもあるはずです。特に支払額の大きい貯蓄目的の保険が、ここ数年のうちに加入したものであれば、貯蓄としては効率が悪いものかもしれません。貯蓄と保障を切り分け、保険では保障だけを備え、貯蓄は貯金や投資で備えていくように役割を整えることも大切です。

住居のクリーニングも、業者に頼むべきもの、自分達でも頑張れそうなものなどもあるでしょうし、旅行も工夫で金額を下げられることもあるかもしれません。ぜひ、検討してみてください。

老後資金は、退職金で賄えない可能性も

退職金がしっかりと受け取れる会社にお勤めの方は、老後資金は退職金でなんとかなると考えることも多いのですが、そうとも限りません。生活の仕方により、それで十分という方もいるのですが、多くの方は退職金だけでは長くなるかもしれない老後の生活費の補填にも足りない計算になることが多いのです。まして、相談者様のご家庭は、今は教育費負担が大きいとはいえ、支出が大きい家計です。退職金がいくら出るのかはわかりませんが、65歳からの年金受給額を「ねんきん定期便」などから知り、生活費がいくら不足するのか、それが老後30年ではいくら不足することになるのかと計算をしてみると良いと思います。

例えば、老後は教育費がかからなくなるでしょうから、毎月の支出は43万5,000円ほど。活動から考えると、もう少し減らせられるかもしれません。そして、共働きだったご夫婦の年金額が27万円ほどあると仮定すると、不足額は月に16万5,000円。30年分準備するとなると、5,940万円にもなります。少し多めの見積りかもしれませんが、退職金だけで準備できるとは言い難い金額であるように思います。

老後資金は、退職金以外でも備える

ですから、前述のように支出を削減し、貯金を増やしていくとともに、運用することを検討してみましょう。貯金だけで作ることが難しい資金を作るには、運用を取り入れることも有用です。

もし始めてみようと思うなら、自分で年金を作るiDeCo、引き出しが自由なつみたてNISAなど、国の制度を利用しても良いと思います。まだ50歳前後という年齢ですから、長く積立、運用できると、必要な資金に近づけられる可能性もあります。

子育てや親の生活の面倒を見る時期には、必要な支出が多くて大変だと思いますが、それでも支出にメリハリをつけ、将来必要となる資金づくりを目指していただきたいと思います。

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