長崎県知事選 『離島の戦い』 保守分裂、住民「対応難しい」 各陣営は支持拡大に懸命 元対馬支庁長、人脈は健在・中村氏/五島出身、地元から待望論・大石氏/意見交換、ネットで振興策・宮沢氏

選挙カーに手を振る市民ら=五島市内

 多くの離島を抱える長崎県にとって、離島振興は県政の重要課題の一つ。20日投票の知事選に向け、各陣営は離島とのつながりを強調しながら支持拡大に懸命になっている。
 14日朝、五島市の福江港ターミナルに長崎港発ジェットフォイルの第一便が到着した。降りてきたのは現職の中村法道候補(71)=3期目=陣営の自民党県議らと、新人の医師大石賢吾候補(39)を支援する地元出身の自民衆院議員谷川弥一氏=長崎3区=ら。まさに「呉越同舟」となった。中村氏の県職員時代の部下でもある野口市太郎市長が中村陣営の県議らを、先に五島入りした大石氏や地元県市議が谷川氏をそれぞれ出迎え、選挙カーに乗り込んだ。
 野口氏は関係自治体でつくる県離島振興協議会会長。同会は中村氏を推薦している。この日、野口氏は「次の大事な4年間は経験豊富な中村氏に任せてほしい」と訴え、市内を終日巡った。陣営関係者は「相手は地元出身。厳しい戦い」と警戒する。
 大石氏は中学生まで富江町で過ごした。実家が養鶏農家だったと強調し、離島の1次産業の振興を訴える。故久保勘一氏以来の五島出身知事待望論は根強く、「必勝」の横断幕で住民が出迎えた。だが陣営幹部は「まだ浸透しきれていない」と気を引き締める。
 有権者の反応は複雑だ。地元商工団体の関係者は「中村氏と大石氏双方の支持者がいる。今回の選挙は対応が難しい」と困惑の表情を浮かべる。
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 「対馬をこよなく愛し、第二の故郷と言う中村知事に頑張ってもらいたい」。8日午後、対馬市厳原町の中心部で比田勝尚喜市長がマイクを握った。
 中村氏は2002年から2年間、県対馬支庁長(現対馬振興局長)を務め、その人脈は今でも健在だ。今回は建設・農業関係者が中心となって組織戦を展開。陣営スタッフも8、9日の2日間、選挙カーでくまなく島内を回った。陣営の一人は「市民の反応がいい」と手応えを口にした。
 一方の大石氏は、妻が島中部の峰町出身。7日に来島した際は「私は五島出身で、妻も対馬出身。私にとって対馬は第二の古里」と何度も強調し、“離島色”をアピールした。
 同市では自民党員や漁協の一部などが支持。大石氏は街頭演説で昨今の燃油高騰にも言及した。演説を聴いた中年の男性漁業者は「漁師のためにやってくれそう」と期待を寄せる。ただ、ある漁協幹部は「漁協にもいろいろな考えの人がいる」と言葉を濁した。
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 新人の食品輸入販売会社社長宮沢由彦候補(54)は、五島列島の有権者との意見交換をネットで配信し、離島振興策を訴えている。16、17両日は離島の北松小値賀町と佐世保市宇久町に入る予定だ。


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