長崎大・泉川教授「医療 予断許さず」 中村知事、制限緩和「近く方向性示す」

 長崎大学病院感染制御教育センター長の泉川公一教授は15日の記者会見で、新型コロナウイルスの第6波について「県内の新規感染者数は減少傾向だが、医療提供体制は予断を許さない」と述べ、引き続き感染対策を緩めないよう呼び掛けた。一方、中村法道知事は今後の病床使用率の減少などを見通した上で、まん延防止等重点措置に基づき県民に求めているさまざまな活動制限について、近く緩和の方向性を示す意向を明らかにした。
 泉川教授によると現在、県内のコロナ確保病床数は477床で、13日時点の使用率は46.1%。中でも佐世保・県北医療圏は62.1%、県央医療圏は54.9%に上る。
 入院患者の平均年齢も73歳と、高齢者の割合が従来以上に高い。今年に入り19人の感染者が死亡し、泉川教授は「高齢になるほど死亡リスクは高くなる」と指摘。流行中のオミクロン株は感染力が強く、「高齢者施設や病院でクラスター(感染者集団)が発生している。3回目のワクチン接種が遅れており、高齢や持病がある人はできるだけ早く接種してほしい」と強調した。
 また県内ではコロナ病床確保のため、一般病床約900床が稼働できない状況。その影響で患者の搬送先がすぐには決まらない「救急搬送困難事例」が増加した。長崎市消防局管内では6日までの7日間、受け入れ医療機関が決まらず4回以上照会したケースが前年同期比16.5倍の33件に上った。泉川教授は「適切な医療が受けられない可能性が出てきている」と危機感を募らせた。
 一方、中村知事は15日、新規感染者数の減少傾向が続いているなどとして、外出自粛、飲食店の酒類提供自粛、県有施設の休館、学校の部活動停止などの厳しい措置について「近いうちに緩和の方向性を示すことができる」とのコメントを発表した。
 知事は緩和を求める声が多く寄せられており、1週間の人口10万人当たりの新規感染者数がピーク時の約7割に低下していると説明。「病床使用率は4割程度と予断を許さないものの、過去の推移状況から見ても、徐々に数値は下がってくると期待できる」とした。経済と医療の両立を図るため感染状況に応じ柔軟に対策を見直す考えを示した。


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