川崎中1殺害事件から7年 女性グループ「風化させぬ」 地域ぐるみで子どもの居場所づくり ワークショップを企画

ワークショップで参加者の意見に耳を傾ける井若さん=川崎市川崎区内

 川崎市川崎区の多摩川河川敷で2015年2月、中学1年の上村遼太さん=当時(13)=が少年3人に殺害された事件を身近に感じ、再発防止に向けて地域ぐるみで子どもの居場所づくりなどを模索する団体がある。仕事や子育てに奮闘する市内の女性でつくる「カワジョ会」。事件発生から20日で7年を迎えるのを前に始動した。共同代表を務める井若さつきさん(41)は「事件を風化させず、子どもがより安心して暮らせる街の実現につなげたい」と意気込む。

 「子どもたちと一緒になって理想の居場所を考えるべきだ」「地域で信頼できる大人と出会う機会も必要」

 同会は18日、同区内で「私たちの街・川崎の子どもたちについて考える」と題したワークショップを開催し、子どもの育成支援などに取り組む市民や学生ら約10人と意見交換した。自身の不登校体験なども赤裸々に語られ、「地域の大人」として子どもたちとどう向き合うかを考えた。

 区内で子どもの居場所づくりに取り組む同区地域教育会議議長の宮越隆夫さん(74)が講師を務めた講演では、自然体験や職業体験などの活動を紹介。地域住民が連携した取り組みについて学び、参加者から「今回参加した皆さんと一緒に活動したい」という声が上がった。

 井若さんは「特効薬はないけど、一緒にやろうという参加者の思いを感じられたのは大きな収穫」と手応えを口にした。

 同会は昨年7月に発足。区内を中心に自営業などで働く女性ら約10人が勉強会などを通じてさまざまな団体とネットワークを広げ、地域を盛り上げようと活動している。メンバー同士で語り合う中で、事件の風化を懸念する声が上がり、ワークショップを企画。参加者らとネットワークを築き、地域ぐるみで子どもを育む活動につなげるのが狙いだ。

 上村さん殺害事件は、子どもの孤独や「SOS」への対処の遅れなどが指摘された。同会には現場近くに住み、子どもを育てるメンバーもいて、井若さんは「人ごとではない」と感じている。自身も2児の母で「若いエネルギーが有り余って、道を外れてしまうことがある。地域の大人が目を向け、ちゃんと発散できる環境や場所が必要」と話す。

 ワークショップの参加者とともに事件現場を訪れ、黙とうをささげた井若さん。「『あんな事件あったね』で終わらせてはいけない。行動につなげないと」。子どもたちの笑顔を守るため、地域に突き付けられた課題と向き合う。

 ◆川崎中1殺害事件 川崎市川崎区の多摩川河川敷で2015年2月20日、市立中学1年の上村遼太さん=当時(13)=の遺体が見つかり、県警は7日後に区内に住む17~18歳の少年3人を殺人容疑で逮捕。3人は家裁送致後に逆送され、横浜地検は殺人と傷害の罪で主犯を、傷害致死罪でほか2人を起訴した。17年1月までに、全員の不定期刑が確定した。

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