十八親和銀 トップ交代 成長へ大胆に若返り

頭取就任を前に抱負を語る山川氏。左は現頭取の森氏=長崎市銅座町、十八親和銀行本店

 十八親和銀行(長崎市)は新しいトップに山川信彦執行役員(56)を抜てきした。経営統合・合併を順調に進め、次の成長ステージに向け大胆に若返りを図った。
 銀行業界で執行役員が取締役に昇任せず一気に頭取に就くのは珍しい。同行の役員は計21人(取締役11人、執行役員11人)。「サプライズ人事」(幹部)の背景には、十八銀行とふくおかフィナンシャルグループ(FFG、福岡市)の経営統合が公正取引委員会の審査で長引いた事情がある。森拓二郎氏が十八銀頭取に、吉澤俊介氏が親和銀行頭取に就いてから、いずれも7年余りが経過していた。
 親和銀出身の山川氏は2019年4月の十八・FFG経営統合前から営業推進部長を務めてきた。長年のライバル行だった旧2行の融和が大きな課題となったが、山川氏について森氏は「事務システム統合研修など負担が大きかった十八の行員にも手厚く目配りしてくれた。大きな目で物事を見て、将来の夢を語れる人材」と評価した。
 20年の新銀行発足時から森、吉澤両氏の「2トップ」体制を敷き、あえて業務の色分けをせず、バランスを図ってきた。今後は山川氏が本業に専念し、長崎経済同友会代表幹事や九経連副会長などを務める森氏は財界活動に軸足を移す。
 2週間ほど前に後継指名されたという山川氏は「突然の話でびっくり」したという。だが横浜銀行(横浜市)の新頭取は55歳。みずほフィナンシャルグループ新社長も山川氏と同年次で、銀行トップの「平成入行組」への世代交代は全国的な流れとなっている。
 十八親和銀は21年1月にシステム統合を成功させ、同5月から始めた全68カ所の店舗統合(移転)も「おおむね順調」(森氏)。4月からは新中期経営計画をスタートさせる。会長から顧問に退く吉澤氏は「この2年で新銀行の土台はできた。いよいよ成長のステージに入る。この転換期に若いリーダーにバトンをつなげるのは大きな喜び」と強調。親和の後輩、山川氏について「熱い志と実行力を兼ね備えており、自信を持って未来を託せる」とした。

<一問一答> 信頼構築 追求続ける 山川氏、収益力強化へアイデアを 森氏
 十八親和銀行の次期頭取・山川信彦氏と現頭取・森拓二郎氏の会見での主な発言は次の通り。

 -自身の強みは。
 山川氏 どちらかというと動きながら考えるタイプ。そこがスピード経営の時代に、はまるかもしれない。

 -トップが10歳若返る。
 山川氏 若さの賞味期限が切れる前に、どれだけ前向きな仕事ができるかが問われる。

 -行内融和は進んだか。
 山川氏 私は営業現場で多くの十八、親和両行員と対話してきた。みんな「合併して良かった」と地域のお客さまに思ってもらわなければ、という高い志を持っている。全く心配していない。

 -本店機能や人員の多くを長崎市に集約した後、県北地区への目配りは。
 山川氏 佐世保のお客さまから「寂しい」「今後は?」との声をいただいているが、サポートする思いや取り組みは全く変わらない。県全体を見ながら佐世保にも貢献していく。

 -これからも変えないこと、変えることは。
 山川氏 お客さまとの信頼構築はとことん追求し続ける。合併で県内貸出金シェアは高くなったが、ネット専業銀行や証券会社、保険会社と競合している。銀行の看板やバッジだけで商売をするのではなく、真の金融サービス業として行員一人一人がさまざまな提案ができるよう、意識改革していく。今も実践中だが、もっとできるはずだ。

 -新頭取に期待すること。
 森氏 統合・合併のシナジー効果はコスト削減を中心に想定以上にかなり出てきたが、収益力強化は道半ば。収益源を広げるアイデアを出し、地域に還元してほしい。今後は新型コロナウイルス関連融資の返済が始まる事業者の業績悪化も想定しなければならない。各地域で課題解決事例をたくさん積み上げてほしい。

 -どう成長ステージにつなげるか。
 山川氏 低金利の下、貸出金に代わる収益源を確保しなければならない。個人の資産形成に貢献するのが一つの柱。もう一つは地域の課題解決。企業の生産性向上や人材確保に向けたデジタル化支援を加速させたり、脱炭素化社会に向けた情報をいち早く共有したりと、お手伝いするチャンスはたくさんある。これらを地道にしっかりやり続ければ、おのずと(銀行に)収益はもたらされる。


© 株式会社長崎新聞社