性被害訴訟 長崎大司教区に賠償命令 注意義務違反を認定 地裁判決

判決後の会見で女性信徒のコメントを読み上げる代理人弁護士=長崎市内

 カトリック長崎大司教区の男性神父から性被害を受け、大司教区の事後対応で心的外傷後ストレス障害(PTSD)が悪化したとして、県内の女性信徒が大司教区に550万円の損害賠償を求めた訴訟で、長崎地裁(古川大吾裁判長)は22日、大司教区に110万円の賠償を命じた。
 判決によると、女性は2018年5月、男性神父から性被害を受けPTSDを発症。19年8月に大司教区と示談した。だが、髙見三明大司教はその後の内部会議で、女性について「『被害者』と言えば加害が成立したとの誤解を招くので、『被害を受けたと思っている人』など、別の表現が望ましい」と発言。議事録は神父らに配布された。
 古川裁判長は、大司教区には性被害自体が存在しなかったなどと誤解を与えないよう行動する注意義務があったと指摘。その上で、髙見氏の発言は「性被害自体が存在しなかった、またはその可能性がある旨の言動」と認めた。「知人記者の発言を引用したにとどまる」という大司教区の主張は「単なる紹介・引用とはいえない」として退けた。
 また、議事録は信徒が目を通すことができ、発言は神父や信徒らに相当な影響を与えると判断。女性が受けた二次被害による精神的苦痛は多大だったとして大司教区に賠償を命じた。
 判決後、女性の代理人弁護士が長崎市内で会見。「私の思いが法により理解され安堵(あんど)した。聖職者であっても社会で生活するひとりの人間。(大司教区には)逸脱した言動や隠蔽(いんぺい)体質を見直してほしい」と女性のコメントを紹介した。
 大司教区は取材に「大変お騒がせしている。判決文の内容を精査し、今後の対応を誠実に検討する」としている。


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