ヤクルトで活躍した飯田哲也氏は現在、拓大紅陵高の非常勤コーチを務める
最近は右打ちの子どもを幼いうちに「左打ち」へ変える保護者や指導者が増えている。左打席の方が一塁に近く、凡ゴロが内野安打になる確率が高いと考えられているからだ。他にも、中学で軟式と硬式どちらで子どもをプレーさせるべきか悩むという保護者の声を聞く。実際にその局面に立ったことのある野球解説者で現在、母校の拓大紅陵高で非常勤コーチも務める元ヤクルトの飯田哲也氏に聞いた。
昨年のセ、パ両リーグの打率上位10傑を見ると、いずれも左打者6人・右打者4人で比較的拮抗していたが、2020年はいずれも左打者7人・右打者3人で、しかも1位から6位までを左打者が占めていた。
飯田氏自身は右投右打で野球人生を通したが「左打ちの方が有利であることは間違いない」と言い切る。「個人的な感覚では、左打ちの方が一塁へ2歩分、約2メートル近い。足の速さが同じなら、左打ちの方が年間5~10安打多く、打率も2分以上高い気がする」と語る。
入団2年目には左打ちに挑戦したことがあったが、「うまくいかず、間もなく断念しました」と苦笑する。「右打ちでガンガン打てている子はともかく、打撃で苦労している子、特に足が速い子は左打ちにチャレンジしてみる価値は十分ある」というのが飯田氏の見解だ。
飯田氏は中学まで軟式「高校から硬式を始めても遅くない」
硬式球には早い時期から触れていた方が有利なのだろうか。中学では大きく分けると、学校の部活で軟式に取り組む道と、硬式のクラブチームに挑戦する道がある。飯田氏は「仲間と野球を楽しみたいという感覚であれば、学校の部活動で軟式野球をやるのがお勧め」とする。一方で「高校やプロで野球を続けたいのなら、早めに硬式に慣れた方がいい。特に甲子園常連校、強豪校への進学を希望する場合、一般的に硬式チームの方が人脈を持っているところが多く、高校のスカウトからも注目されやすい」と指摘する。
かつては、小・中学生の頃から投手として硬球を投げ続けると、肩・肘へ弊害があるとも言われたが、最近は球数制限などが徹底されている。一方で、軟式出身のプロ野球選手も増えている。大事なことは、何を求めて野球をやるのか。しっかり考える必要がありそうだ。
飯田氏自身は小、中学校を通じて軟式でプレー。高校進学の際には東京の名門・帝京高を希望したが、セレクションで落選した。それでも、進学した千葉・拓大紅陵高はちょうど野球部強化に乗り出したばかりで、入学した1984年に春夏ともに甲子園初出場。3年時の1986年も春夏連続出場を果たし、ヤクルトからドラフト4位指名されてプロ入りも果たした。
「中学時代は楽しく野球をやりたいだけだったけれど、高校進学にあたってプロになりたいという気持ちが芽生えました。僕は拓大紅陵に行ってよかったと思っていますし、高校から硬式を始めても全然遅くはないということは強調しておきたい」と力を込める。
小学生の頃からの仲間と一緒に野球を始めたとしても、実力がグンと伸びる時期には個人差がある。野球が好きなら簡単には諦めず、自分の現状に合った進路を選択しながら継続してほしい。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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