中村知事が退任「少しホッとしている」 長崎国体や世界遺産登録、最も印象に

職員から花束を贈られる中村氏=県庁

 3期12年にわたり長崎県政のかじ取り役を担った中村法道知事が1日、退任会見に臨み、「常に臨戦態勢で過ごしてきた。少しホッとしている」と表情を緩めた。
 1973年、県に入庁。総務部長や副知事などを歴任し、2010年の知事選で初当選。ほぼ半世紀を県政の推進に費やしてきた。
 14年の長崎がんばらんば国体・大会と18年の「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界遺産登録が、最も印象に残っているという。国体・大会は「県民の声援が選手の力になることを実感した」と振り返り、世界遺産登録に関しては「(中東バーレーンで開かれた)世界遺産委員会に参加し、登録が実現したことが大変うれしい記憶として残っている」と語った。
 基幹産業の造船業などが低迷する中、産業構造の転換に取り組み、半導体分野や航空機関連産業が成長。「次の基幹産業創出に向けた流れが大きくなりつつある」と手応えを口にした。
 一方、九州新幹線長崎ルートの全線フル規格化や、石木ダム建設など長年の課題は積み残したままとなったが、今後については具体的な言及を避けた。
 最後に「県政の発展は県民の協力が不可欠。ぜひ、いろんな可能性にチャレンジしてほしい」と県民に呼び掛けた。

■「県民と思い一つに」 職員を激励

 中村知事は県議会議場で退任式に臨み、「県民と思いを一つにして、明るい将来に向かってまい進してほしい」と職員を激励した。
 県幹部や県議会議員ら約90人が出席。上田裕司副知事が「全身全霊を県政推進にささげた中村知事の背中を見て、大いに学ばせていただいた」と感謝の言葉を贈った。
 知事は「皆さんに思いを託させていただきたい」として、人口減少対策など残された課題や「100年に一度」とされるまちや産業の変化に対応する必要性を約25分にわたり熱弁。「県民と思いを共有し、力を合わせて取り組まなければ事態は変わらない。長崎県の明るい未来を切り開いていくため一層の活躍を」と述べた。
 退庁の際は、廊下や正面玄関前に約800人の職員らが見送りのため並んだ。盛大な拍手を浴びながら握手をしたり、手を振ったり。職員から花束を受け取った後、平田研副知事が万歳三唱で締めくくった。
 公用車に乗り込む際、鳴りやまない拍手に向かって頭を下げた。「ありがとうございました」-。午後4時14分。県職員時代から半世紀近くを過ごした県庁を後にした。


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