無年金の母の生活を支える52歳独身会社員「自分も老後の準備を始めたいが毎月赤字…」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、52歳独身の会社員の女性。無年金の母親の生活費を出しているため、毎月赤字でボーナスで不足分を補填する生活をしているといいます。そろそろ自分の老後の準備も始めたいといいますが、何から始めればよいでしょうか? 家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。


独身の会社員です。無年金の母と同居し、生活費の面倒を見ています。自分もそろそろ老後の準備をはじめなくてはいけないと思っているのですが、現状の家計は毎月1万円ほどの赤字。貯金が増やせません。ボーナスからの補てんでなんとか今ある貯金を減らすことなくやりくりできていますが、今後、母に医療、介護が必要になったら、貯金が減ることが目に見えています。

今の貯金は約700万円。将来的に退職金は800万~1,000万円見込めると聞いています。今のままで、自分の老後資金を蓄えつつ、母の医療介護費に備えることはできるものなのでしょうか。

改善できそうな支出、貯め方など教えていただきたいです。

【相談者】

・女性、52歳、会社員 ・母、78歳、無年金

・毎月の手取り収入:32万4,000円

・年間の手取りボーナス:約100万円

・貯金額:約700万円

・毎月の支出の目安:33万4,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:9万2,000円(ローン)

・食費:7万3,000円(外食含む)

・水道光熱費:2万1,000円

・通信費:1万3,000円(スマホ2台、固定電話、ネット)

・生命保険料:2万1,000円

・日用品代:1万円

・医療費:8,000円

・教育費:7,000円

・交通費:5,000円

・被服費:3,000円

・交際費:5,000円

・娯楽費:2万1,000円

・小遣い:4万円

・その他:1万5,000円

FP:お母様との生活費の負担で、貯金ができない状況なのですね。ご自身の老後資金を増やしたいのであれば、毎月の支出やボーナスの使い方を見直して、貯蓄に回せるお金を増やすことから始めるとよいでしょう。

情報共有によって無駄を防ごう

家計のやりくりは、どのようにされているでしょうか。親と同居される方には、生活スタイルが異なる場合に、留守中の生活費を親に渡して管理させ、自分は自分で管理するという、別々の家計管理をされるケースがあります。

この場合、特に女性同士だと必要だと感じるものが同じになりやすいこともあり、買い物した商品が重複し、それが食品などの場合は食べきれずに傷ませ、無駄にしてしまうということも起こりがちです。

もし、相談者様の家計管理がそのようになっているのなら、買い物する品物の情報を共有するような工夫が節約に役立つのではないでしょうか。方法はいろいろありますが、お二人ともスマホを持っているので、アプリなどを活用すると、すぐに共有ができると思います。一番わかりやすいのは、メッセージアプリの活用です。写真も送れるので、商品を間違うことがないでしょうし、即座に共有できます。

また、親子で支出を見直すのもよいと思います。食費は多すぎないか、スマホ代は高すぎないか。娯楽費は適正かなど、気が付いたところからお金の使い方を見直すと、全体的な支出の削減につながっていくでしょう。

また、ボーナスの使い方も一度見直してみましょう。毎月の生活費の補てんに使っているのは、今回の試算では年間で約12万円。残りの80万円強は使い方によっては貯金に回せる分もあるのではないでしょうか。

iDeCoやNISAの活用で老後資金作りを有利に進めよう

支出を見直すと、貯金に回せるお金ができたと思います。そのお金は、しっかりと積み立て、貯蓄としていきましょう。

今から目的別に分けて貯めていくのは大変だと思いますから、今ある貯金をベースにまとめて貯めていく方針でいいと思います。貯金を生活防衛資金として持ちつつ、必要時はそこから医療介護費を負担します。

この先できる収支の差分は、老後資金のために投資に回すことを考えてはいかがでしょうか。もちろん、投資が向かないとお考えでしたら貯金するだけでも構いません。ですが、効率よくお金を作っていくには貯金よりも投資が有利です。

投資の中でも、税の優遇制度のつみたてNISAやiDeCoの活用がよいでしょう。今年の5月から制度の改定がされ、 iDeCoの加入上限年齢が65歳まで引き上げられます。相談者様もあと12年加入することができるのです。掛け金が全額所得控除になり、年末調整時の還付額が大きくなりますし、60歳まで引き出せないので、老後資金以外の用途で使ってしまうことも防げます。また、現行ではつみたてNISAは、2023年が20年の非課税運用ができる最後のチャンスです。今からだと、73歳まで非課税で運用できます。

もし投資を始め、3%の運用益で毎月3万円を20年積み立てると、元金は720万円、運用益は265万円ほどの、合計985万円ほどができることを見込めます。相場は日々変わりますから、大雑把な目安ではありますが、今の金利で銀行に預金するよりは、効率がいいことがわかると思います。

介護にかかる費用を把握しておこう

介護については、必要時には医療機関や介護施設からもお知らせがあると思いますが、ご自身でも情報を集めておきましょう。知っていれば、その時の状況に合わせた選択ができます。

公的保険に加入していれば、医療が必要な場合は公的医療保険が、介護が必要な時は公的介護保険が使え、自己負担額はかかった医療費の1〜3割で済むことになります。その自己負担額も上限を超えると「高額療養費制度」「高額介護サービス費制度」を利用でき、超えた分の還付を受けられるようになります。

介護費については、在宅介護の場合、自己負担の月額平均は約7.8万円というデータが「公益財団法人 生命保険文化センター」から出されているので、目安にしてもよいと思います。

また、施設入居になると、民間では初期費用で数千万円必要な場所もありますが、月額は10~30万円ほど。公的施設になると、初期費用はかからず、月額8〜15万円程度が目安となります。

金額は施設により差があるので、あくまで目安ですが、万が一のことがあった時には、在宅なのか、施設なのか、使える制度は何かなど、選択できるための知識は持ち合わせておきたいもの。ある程度の情報収集はしておくようにしましょう。

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