ウクライナ出身 ハウステンボス出演のボーカルユニット 「戦争は愚か 話することできるのに」

「ウクライナにいる親族が心配。戦争は愚かだ」と話すアレフさん(左)とバディンさん=佐世保市、ハウステンボス

 ロシアによるウクライナ侵攻から1週間が過ぎた。各地で戦闘が激化し、多くの民間人が犠牲になっている。長崎県佐世保市のハウステンボス(HTB)で活動するウクライナ出身の男性ボーカルユニット「マキシマム」のメンバーは、母国にいる家族や友人の身を案じ、不安な日々を過ごしている。
 パシュコフスキー・アレフさん(35)とベスブリャック・バディンさん(34)は、ウクライナの首都キエフから南西約200キロに位置するヴィーンヌィツャの出身。2人とも音楽が趣味で、大学時代にもう一人の友人と3人で「マキシマム」を結成した。2011年、世界的なオーディション番組に出演して有名になり、それからプロとして活動。14年にHTBで仕事をするため来日した。
 ロシアによる母国への侵攻が始まってからも毎日ステージに立ち続けているが、複雑な心境だと明かす。アレフさんは「たくさんの子どもやお年寄りが死んでいる。そんな状況の中、私たちがステージで歌っていることは、罪なのではないかと感じている」と吐露する。バディンさんは「私たちは自分の家族や友人を守れない」と嘆く。
 2人の親族は現在、故郷のヴィーンヌィツャにいる。アレフさんは「今は安全だけど、いつロシア軍が来るか分からない」と不安を口にする。ウクライナでは大統領の総動員令により、18~60歳の男性は原則出国が認められない。アレフさんの父は59歳で、出国はかなわなかった。家族と毎日連絡を取り合い、安否を確認しているという。
 不安の尽きない日々だが、観客から「ウクライナ頑張れ」と声を掛けられることもあり、「力をもらっている」と感謝する。
 ロシアのプーチン大統領は核兵器使用の可能性をにおわせ、圧力をかけている。これに対しアレフさんは「プーチンを長崎原爆資料館に連れて行くべきだ」と厳しく批判する。
 「2022年の今、戦争をやるなんて愚かだ。私たちはいつでも話をすることができるのに」。2人は一刻も早く母国に平和が訪れることを願っている。


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