「ロシアよ、早く目を覚まして」 ウクライナの友人から惨状知る 長崎大助教の高橋さん

ビデオ通話でウクライナ人の友人グテービチさんと話す高橋さん(右)=長崎市内

 長崎大助教の高橋純平さん(54)は、ロシアのウクライナ侵攻を苦しい思いで見詰める。旧ソ連時代から文化交流に携わり、チェルノブイリ原発事故による放射線影響研究にもスタッフとして関わってきた。侵攻後、現地の友人と連絡を取り合う中で、戦争の悲惨さや核兵器の脅威をあらためて痛感している。高橋さんは願う。「ロシアよ、早く目を覚まして」
 大学でロシア語を学んでいた1989年、米国とソ連の市民交流事業で初めてウクライナを訪問。93~98年はロシアに住み、日本とのホームステイ交流事業なども手掛けた。2009年から、長崎大が同原発事故の被災国ベラルーシに設置した教育研究拠点のコーディネーターを務める。
 教育拠点はウクライナ、ベラルーシ、ロシアの医療機関などと放射線の健康影響について共同研究。現地学生の研修サポートなどにも取り組む。高橋さんもコロナ禍の前まで、年間の3分の1程度はそこで活動してきた。
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 その中で知り合ったウクライナ人の一人が、原発事故の被災地コロステン市で暮らすジトーミル州立診断センター元副院長、オレクサンドル・グテービチさん(66)。ロシアによるウクライナ侵攻後も連絡を取り合う。
 1日午後、記者も同席し、高橋さんを介してビデオ通話でグテービチさんに現地の様子を聞いた。
 「昨晩は空襲警報が5回鳴り、防空壕(ごう)に避難した。上空を飛ぶロケットも何度か見て、近くの村は爆撃された」。商店は軒並み閉まり、市民は買いためた食料でしのいでいるという。
 現役時代、甲状腺専門医として被ばく医療などに従事し、研修のため長崎を5回訪れたグテービチさん。「原爆資料館に行った時のことは忘れられない。原爆被害は非常に恐ろしく、二度と繰り返してはいけない」と振り返る。
 ロシアのプーチン大統領は今、核兵器使用さえもちらつかせる。「ウクライナは平和を愛する国。原発の核被害に遭った国民が、核兵器の被害まで受けることはあってはならない。核兵器が世界のどこでも使われないよう望んでいる」と訴えた。
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 高橋さんは2月末、長崎市内で参加した抗議活動の様子をフェイスブックに投稿。知人のロシア人から意外な反応が返ってきた。「今まで何を見てきたのか。(プーチン氏が主張する)ウクライナの虐殺を見ずに何が戦争反対だ」。高橋さんは「巧みなプロパガンダ(宣伝工作)に国民が操作されている」とショックを受けた。
 軍事侵攻の出口はまだ見えない。「ウクライナの側にいたいと思うが、ロシアには“正義”に取りつかれて攻撃的になっている人もいると感じる。どこかで目を覚ましてほしい」。高橋さんは案じる。


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