密集から素早くパスを出して攻撃のテンポを上げる。突進してくる大型FWを、低く、鋭いタックルで仕留める。身長160センチのSH川久保瑛斗は3年間、長崎北陽台の速く、ひた向きなラグビーを体現しながら、各カテゴリーの日本代表に選ばれ続けてきた。
鳴鼓小4年で時津ラグビースクールに入校。「それまでは母の勧めでダンスとかをやっていたけど、ラグビーはめっちゃ楽しかった」。当時から小柄だったが、生来の「負けず嫌いの性格」も競技とマッチしたのだろう。身体能力の高さもあって、すぐにチームの中心選手になっていった。
最初に代表に呼ばれたのは鳴北中2年の冬。世界と戦える可能性を秘めたタレントを育成、強化する日本ラグビー協会の「セブンズユースアカデミー」。基本的に高校生を対象とした代表に招集された。「最初は何に選ばれたのか分からなかった。メンバーを見て驚いた」。以降、アカデミーは4年連続、今季は高校日本代表、U-20日本代表候補にも選出された。
中学卒業時の進路は「迷った」。二つ上の兄がいる長崎北も考えたが、最終的に「北陽台の品川英貴先生の下でやりたい」と決断。同時に自らの体格を考え、中学まで経験したことがないSHへの転向も決めた。
そのSHの挑戦は「簡単に見すぎていた。思っていた以上に難しかった」。中学まではフィニッシャー的な役割のFBが主だったが、SHは司令塔として試合を組み立てる力が求められる。「今もだけれど、パスが全然で…」。高校時代はSHになるための3年間でもあった。
体が小さいため、周りからなめられて「やめたいな」と思ったこともある。中学時代に県選抜で全国に出たとき、相手から「ちっさ」と言われたりもした。でも、そのたびに「小さいからこそできることもある」と燃えた。そして「高校で品川先生にあらゆることを教わり、(コーチの)浦敏明先生のおかげでコンタクトも強くなれた」。世代ナンバーワンのSHに成長した。
次の目標は2人の先生や支えてくれた母への恩返し。夢は大きく「フル代表になりたい」だ。ワールドカップ(W杯)で背番号「9」を背負うことが、一番喜んでもらえると思っている。