県内高校の運動部員数推移 全体数減も加入率上昇 「裾野拡大」は難しい状況

県高体連加盟・登録数(全日制、野球は非加盟)

 全国的な少子化に歯止めがかからない中、高校の運動部員数も減少傾向にある。長崎県高体連と高野連に加盟する生徒数(全日制)も、2020年度と長崎ゆめ総体(インターハイ)が開かれた03年度を比べると、全体で約5千人減少。一方で県全体の生徒数もこの18年間で約1万7千人減っており、運動部活動の加入率自体は約9%(03年度48%、20年度57%)上がっている。データを基に現状を考えた。

■増えた競技も

 大前提として、競技者数と強さは必ずしも比例していない。少数精鋭で活躍する部もあれば、多くても結果を出せない、もしくはこだわらない部もある。名前だけの“幽霊部員”のような生徒もいる。「多い方がいい」という話ではない。
 そこを踏まえた上で現状を見ると-。サッカーをはじめ、部員数が増えた競技もある。サッカーは18年間で約230人増加。「女子部の創設」が要因の一つで、全国で実績を残している鎮西学院のほか、男女共学となった海星などが創部している。
 男子も学校数は微減したが、部員数は約100人増えた。全体的に裾野が広く、離島などでも取り組む学校が多い点が理由に挙げられる。
 倍増しているカヌーは指導者の努力が大きい。03年度は長崎水産(現・長崎鶴洋)、野母崎に加え、02年度に西川和昭実習助手の下で活動を始めた長崎西の3校だった。11年3月に野母崎が閉校した後は、オリンピアンの西夏樹教諭を迎えた西陵が部を創設。県内3校を維持する形になった。各拠点にジュニアクラブもあり、競技団体と一緒に普及と強化を続けている。
 水泳・水球の増加はスイミングクラブからの継続が一因か。10年度に坂本博文教諭の尽力で創部した長崎工水球部の存在も大きい。自転車は03年度の1人から20人以上増えた。県内に部活がある学校がなくなった時期もあったが、07年度に馬場秀朋教諭が鹿町工に同好会を設立。強化拠点となり、現在も豊岡弘教諭と一緒に精力的に活動している。

■武道系は半減

 一方で柔道、剣道、空手、レスリングは、いずれも半減した。スポーツや娯楽の多様化に伴い、町道場などに通う子どもの減少が一因とみられる。ボクシングも大幅減。03年は格闘技ブームやテレビ番組の影響もあり、部員数が増えていたが、流行の落ち着きとともに下降してきた。一方、本年度は東京五輪の開催でメディアの露出も多かっただけに、子どもたちが憧れて競技を始める可能性もある。
 競技によっては小中学を含めて、学校数の減少も深刻な問題。各地で児童数が減り、小中学生のクラブが少なくなっている。中でもチームスポーツは、やりたくてもできない状況にある。特に離島や小規模校であおりを受けており、競技の選択肢が狭くなっている。

■活動継続困難

 このように高校の部活加入率は増えているとはいえ、実際に人数減で活動継続が困難なところも出てきている。教員の働き方改革もあるだけに、従来同様の在り方では廃部に追い込まれる部活も増えるかもしれない。各競技の「裾野の拡大」は難しい状況だ。
 逆にこの現状で競技力向上を目指すならば、新しい手法を取り入れる必要もあるだろう。これまで以上に強化拠点校を県内各地に増やし、そこに複数の専門指導者、教員を配置する。「少人数でも全国で戦える部活の育成」は、将来有望な選手のためにも、熱心で優秀な指導者のためにも、不可欠と言えそうだ。
 県高体連の後藤慶太会長は「運動部員数の推移は結論が言えない難しい問題」と前置きをした上で、これからの部活動の在り方を見据える。「生徒数の減少、学校規模の縮小は進んでいる。将来的に学校ごとに競技数を絞って特色を出す米国型か、地域にクラブを移行する欧州型になることも考えられる。部活動の在り方が問われている」


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