露侵攻で小麦粉高騰 そうめん産地・南島原の生産者懸念 世界情勢注視

特産の島原手延べそうめんをPRする看板=南島原市西有家町

 ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、小麦粉の価格高騰を懸念する声が長崎県南島原市の「島原手延べそうめん」生産者から上がっている。国は米国やカナダ、オーストラリアなどから輸入しているが、供給不安から穀物の市場価格が急騰しており、生産者や市は世界情勢を注視している。
 「小麦粉の支払いだけで15%高くなった感じ。原料の塩も20%値上がりしている。価格に転嫁できればいいが」。こう話すのは長崎そうめん末永(同市有家町)の末永義邦さん(52)。「価格上昇分を転嫁しやすい直販の比率を上げるなど対策を立てなければ」と気を引き締める。
 市によると、本県は兵庫県に次ぐ手延べそうめんの一大産地で、全国2位の生産量。市内では現在、約240社が生産している。
 生産者向けの業務用小麦価格改定案内によると、昨年6月は主にパンの原料となる「強力・準強力小麦粉」が25キロ当たり110円、麺の原料となる「中力・薄力小麦粉」が同80円だったが、12月には「強力・準強力小麦粉」が同315円、「中力・薄力小麦粉」は同345円に跳ね上がった。
 さらに、農水省は今月9日、国が輸入した小麦を製粉会社に売り渡す主要5銘柄の2022年上半期(4~9月)の平均価格を、前期比17.3%引き上げると発表した。北米の不作が国際相場を押し上げたことが主な要因。19%上げた21年度下半期に続く大幅引き上げ。現行の算定制度になった07年4月以降、過去2番目に高い水準となった。

南島原市特産の「島原手延べそうめん」

 南島原市の約30の生産者と取引する熊本市内の製粉業者は「世界の小麦輸出量の3割を占めるロシアとウクライナからの供給不安が広がっており、高値が続く可能性が高い」と話す。
 そうめん業界は、コロナ禍の巣ごもり需要で一時活況を呈したが、冷や水を浴びせられた格好。末永さんは「電気やガスなどのエネルギーコストも上昇しており、不安材料は尽きない」と気をもんでいる。

 市商工振興課そうめん振興班は「昨年12月に23の生産者を訪問した。今後も市場動向を見極めつつ、生産者への聞き取りを実施し必要な対策を講じる」としている。


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