トップは「会社員」

 将来、就きたい職業は? 60年前、ある雑誌が全国の小学6年生にアンケートしたところ、男子では「サラリーマン」がトップになった。その年、1962年には植木等さん主演の「ニッポン無責任時代」が封切られている▲スイスイスイッと、サラリーマンが口八丁で世を渡る。その野放図さは、経済成長の坂道を上る人々の心を軽やかにし、子どもの目にも生き生きと映ったのだろう▲それからずっと、サラリーマンや会社員はランク外にいた。第一生命保険は毎年、子どもの就きたい仕事を調査してきたが、もう30年近くも10位以内にない。男子はスポーツ選手、女子は「食べ物屋さん」がトップの常連だった▲今はどうだろう。昨年12月の調査では、小学生女子の1位が「パティシエ(菓子職人)」だったほかは、男子の小中学・高校生、女子の中学・高校生で「会社員」がトップという“異変”が起きている▲それを選んだ理由の第一は「働きやすそうだから」。コロナ禍で在宅勤務が世に広まり、柔軟に、自分のやり方で働く将来像を思い描く子どもが増えたらしい▲会社員の「員」は「枠の中にいる人」を言い、「まるい」「円」の意味もある。確かに、会社員とは組織の枠に囲われている印象だが、先々は「円滑に生きる人」も指すようになるだろうか。(徹)

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