月の手取りが65万あるのに借金250万の40代共働き家庭。支出の問題点は?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、共働きで2人のお子さんをもつ44歳会社役員の男性。子どもたちの学費や住宅購入の費用を貯めたいけれど、カードローンなどの借り入れがあり、なかなか貯金が増やせないといいます。月の手取りは65万円ありますが、問題点はどこにあるのでしょうか? FPの秋山芳生氏がお答えします。


44歳、会社役員をしています。妻(40歳)は看護師(パート)です。

3歳と6歳の子どもたちの学費や、将来の住宅費用(住宅ローン6〜8万円を想定)を貯めなければいけないのですが、クレジットの借り入れがなかなか減らず、思うように貯めることができません。残債は60万円、金利3%で、毎月4万5,000円ずつ返済しています。

家計のどの部分を改善していけばいいでしょうか?

【相談者プロフィール】

・男性、44歳、会社役員

・妻:40歳(看護パート) ・子ども:3歳、6歳

・母:年金生活者(介護不要、持病あり)

・住居の形態:親の家で同居(長野県)

・毎月の世帯の手取り金額:65万円(本人50万円、妻15万円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:50万円

・毎月の世帯の支出の目安:50万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:8万円

・食費:8万円

・水道光熱費:4万円(冬季)

・教育費:4万円(保育料含む)

・保険料:6万円

・通信費:2万5,000円

・車両費:6万5,000円(車両ローン、燃料含む)

・お小遣い:2万円

・その他:5万円(自己啓発、セミナー)

・カード支払い5万円

・借り入れ返済4万5,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:2万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:40万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):300万円

・現在の投資総額:50万円

・現在の負債総額:250万円(車両190万円、クレジットローン60万円)

秋山:ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼 FP YouTuberの秋山芳生です。今回のご相談者様は、長野県在住の44歳の会社役員の方からです。40歳の妻と、3歳と6歳のお子さんがいらっしゃいます。手取りで月に65万円の収入がありながら、借り入れの返済がありなかなか貯蓄が貯まらないようです。お子さん二人の教育費と老後の資金を本気でつくるにはどうすればよいかを、いつもよりストイックにアドバイスしていきたいと思います。

支出のチェックと改善ポイント 住宅費・食費・水道光熱費

まずは支出の内訳を確認し、改善ポイントをアドバイスしていきたいと思います。

●住宅費:8万円
住宅はご両親の家で同居して8万円かかっています。これはご両親に仕送り的な意味もあるかもしれません。金額としては65万円の手取り収入の12%程度なので、高いということはないでしょう。今後は家を買うために住宅ローンを組もうと考えているのかもしれませんが、借金があるうちは危険ですので、家計が安定してから考えるとよいと思います。

食費:8万円 →削減可能
妻とお子さん2人との4人暮らしであれば、高めではありますが高すぎるということはありません。妻がパートの合間に料理ができるようであれば5万円ほどに圧縮できる可能性はあるでしょう。その場合は、1週間単位で食費予算を決めるとともに、支出状況を把握してコントロールするとよいでしょう。

●水道光熱費:4万円 →削減可能
冬場は暖房代がかかるエリアなのかもしれません。電気やガスの費用が高いようであれば少しでも単価を下げられるように、見直しを考えてもよいでしょう。例えば比較サイトの「エネチェンジ」などを使って電気代・ガス代などを比較してみてはいかがでしょうか。

支出のチェックと改善ポイント 教育費・保険料・通信費

●教育費:4万円(保育料含む) →削減可能
ここは内訳をしっかり考えたほうがよいでしょう。3歳以上であれば保育費は実質無料になっていると思います。給食費やレクリエーション費はかかると思いますが、使いすぎているポイントがあるかもしれません。例えば保育園から写真購入の案内などもあると思いますが、使いすぎていないかなど考えてみてください。

●保険料:6万円 → 5,000円
高すぎますね。ドル建て終身保険などの貯蓄型保険に加入しているようであれば、解約をおすすめします。貯蓄型保険の実態は「あまり増えない投資信託」と「割高な保険」の組み合せです。投資対象としては効率が悪いので、投資として増やしたいのであればiDeCoやつみたてNISAをお勧めします。

お子さんがいるので死亡保障は必要だと思います。掛け捨ての「収入保障保険」などを選ぶとよいでしょう。医療保険についても貯蓄300万円があるので不要です。基本的には公的な保険に入っているので3割負担や高額療養費を理解すると安心感が増すと思います。

●通信費 2万5,000円 →1万5,000円
3大キャリアの平均的な利用料は8,000円ほどと言われています。内訳はスマホ2台で1万6,000円とネット代6,000円、その他NHKなどでしょうか。ここは格安携帯に変えると大幅に削減できるでしょう。

支出のチェックと改善ポイント 車両費・その他

●車両費:6万5,000円
こちらも家計の中で支出が多いと思います。車は保険や住宅とならび「3大浪費」に数えられます。資産になるという人もいますが、ランニング費用(ガソリン、車検、自動車保険)がかかる上に、特定の車でなければ売却価格は下がり続けるので、基本的には負債です。「充実した生活を送るために車を買う」のであればよいですが、「車を買うために生活が苦しくなる」のでは本末転倒です。自動車を売却してカーローンを返済し、新しく中古車などを選ぶとよいと思います。

●その他:5万円 →0円
自己啓発やセミナーにお金をかけているようですが、ここは本当に自己投資になっているか考えたほうがよいでしょう。会社で役員をしているので、マネジメント力を鍛えたり、自己研鑽をしたりするのは非常によいと思いますが、借金がある中で年間60万円かけるべきなのかは考えものです。収入を増やすための投資と考えているかもしれませんが、投資は借金が無くなってからが鉄則です。無料で動画を見たり、本を読んで学んでも十分に吸収することができるでしょう。

少なくみても、毎月の支出から合計12万円は改善できそうです。

投資よりもいち早く返済を

借金についてはカードの返済と借り入れ返済で9万5,000円の支払いがあるので、これではなかなか貯蓄が増えないと思います。300万円の現金貯蓄がありますが、借金の返済に当てられないのはお子さんの教育費などを貯めているのでしょうか? 本質的に考えると見かけ上の貯蓄額を気にするのではなく、返済を優先するべきだと思います。300万円の貯蓄を守るより、250万円の借り入れを返済して借金をゼロにした上で、家計を貯蓄体質に変えて積み立てた方がよいと思います。

貯まりやすい家計になるには、収入から貯蓄額を引いた残りで生活する「先取り貯蓄」が推奨されますが、いきなりやっても失敗することが多いです。自動振替で別の貯蓄口座に振りわけても、根本的な家計が改善していなければ生活費が足りなくなります。そうなれば、せっかく別口座に入ったお金を引き出すことになるので意味がありません。まずは家計ひとつひとつの支出を見直し、改善してから、自動で無理のない金額を振り替えるとよいでしょう。

貯蓄性保険よりもつみたてNISAやiDeCoを

また、貯蓄型保険ではなく、つみたてNISAやiDeCoなどの税制優遇制度を利用するとよいでしょう。貯蓄型保険は、途中解約すると解約返戻金が少なく元本割する可能性があります。また、利回りが低く手数料が高いので、長期でお金が拘束されるわりにはリターンが少ないので機会損失になります。あまりに返戻金が少ない場合を除いて、「割高な掛け捨て保険に入ったけれど、何事もなくてよかった」と割り切って解約し、投資に切り替えていくとよいでしょう。

穴の空いたバケツに水が貯まらないように、支出がコントロールできない家計にはお金は貯まりません。家計を把握してひとつひとつの支出を改善し、お金が貯まるような仕組み(自動振替や、自動積立投資)が設計できれば、収入は高いので不安のない資産形成ができるでしょう。

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