アフガニスタンから脱出した男の半生 アニメで描く異色のドキュメンタリー 「FLEE フリー」予告

3月28日(日本時間)に発表される本年度アカデミー賞で、史上初となる国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞の3部門にノミネートされているドキュメンタリー映画「FLEE フリー」の、特報映像とティザービジュアルが公開された。

特報映像は、主人公アミンの親友である映画監督(本作の監督ヨナス・ポヘール・ラスムセン)が、アミンに向かって尋ねる「誰かに話したことは?」という問いに対し、アミンが「一度もない」と答えるシーンから始まる。アミンが20年に渡り誰にも明かしたことのなかった過去。初めて語られる幼少期からの過酷な経験が、アニメーション映像によって描かれていく。アニメーションは2つの異なるスタイルが用いられているほか、実際のニュース映像も織り交ぜられており、斬新な手法の一端を見ることができる。

数々のラジオ・ドキュメンタリーを手掛けてきたヨナス・ポヘール・ラスムセン監督は、斬新なスタイルで本作を作り上げたことについて、「私的な物語を語る過程で、私は常に新しい方法や新しいアプローチを探求しようと心がけています。語られる物語に沿うように、映画の形式を捻じ曲げる方法を探るのです。『FLEE フリー』では、そのレパートリーにアニメーションを加えました。アミンが惜しみなく私に共有してくれた、貴重な証言にふさわしい舞台を与えられるよう、説得力があり、魅力的な語り口を作ることを目指したのです」と語っている。

あわせて公開されたティザービジュアルには、本作に登場するさまざまな国籍の119人が描かれている。この中には、カセットプレーヤーでお気に入りの曲を聴きながらはしゃぐ幼い頃のアミン、自身のトラウマと向き合う現在のアミン、そしてアミンの恋人や家族、ラムスセン監督の姿もある。あわせて描かれた「故郷とは、ずっといてもいい場所」のコピーは、作中のアミン自身による印象深いセリフで、難民でゲイという2つの葛藤を抱えながら生きてきたアミンにとっての、「故郷」という言葉の重さが表現されている。

「FLEE フリー」は、アフガニスタンで生まれ育ったアミンについての作品。幼いアミンは、ある日父がタリバンに連行されたまま戻らず、残った家族とともに命がけで祖国を脱出し、たった一人でデンマークへと亡命する。やがて、30代半ばとなったアミンは、壮絶で過酷な半生を静かに語り始める。主人公のアミンをはじめとする人々の安全を守るため、アニメーションで制作された。自身も迫害から逃れるためにロシアを離れたユダヤ系移民であるヨナス・ポヘール・ラスムセンが監督を務めている。アカデミー賞史上初となる国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞3部門にノミネートされている。

【作品情報】
FLEE フリー
2022年6月10日(金)新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン 池袋他全国ロードショー
配給:トランスフォーマー
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