ハウステンボス開業30年 植栽企画課長 能見徳之さん(48) 「いつでも花で癒やされる街に」

「お客さまがいつでも花で癒やされるような街にしたい」と話す能見さん=佐世保市、ハウステンボス

 長崎県佐世保市のハウステンボス(HTB)は25日、開業30周年を迎えた。数々の困難を乗り越え、挑戦を続けるテーマパークがオープン当初から一貫して大切にしてきたものの一つに「花」がある。HTBの人気をけん引する花のイベントを担当するのは、植栽企画課長の能見徳之さん(48)。自身も勤続30年を迎え、さらなる成長へ気持ちを新たにしている。
 風車が並ぶフラワーロードに、色とりどりのチューリップが咲き誇る。春のHTBを象徴する景色だが、今年はある「進化」を遂げた。チューリップ畑の中を散策するための遊歩道を整備し、ブランコを設置。能見さんは「花に囲まれ、ブランコに乗って写真を撮れるようにすることで、体験価値を上げたかった」と狙いを明かす。
 開業した1992年に入社し、店舗スタッフやエリアリーダーを経験。2013年から、花のイベント関係の責任者を務める。「最初は花についてほとんど無知だった」。そのため一から勉強を始めた。
 エイチ・アイ・エス(HIS)傘下となった10年以降、HTBは花の魅力向上に注力していた。チューリップにバラ、アジサイ、ユリ、ヒマワリ…。春から夏にかけては季節に合わせたイベントが充実していたが、秋と冬は目玉がなかった。「年間を通して花を楽しめるようにしたい」。知恵を絞り、秋には「花の大運河」、冬には「大胡蝶蘭展」などを企画した。
 19年に就任した坂口克彦社長の下ではフラワーアートの内容を一新。これまでは入場口から一番遠い「パレスハウステンボス」で不定期で展示していたが、より多くの人に見てもらうため、会場を中心部の「パサージュ」に変更。昨年秋から約2カ月ごとにテーマを変え、季節の花のアートを定期的に楽しめるようにした。
 担当になって9年。知識は増えたが「花は向き合えば向き合うほど難しい」と話す。できるだけ良い状態で見てもらうために最善を尽くすが、どうしても気温や天候の影響を受け、早く咲いたり散ったりしてしまう。チューリップは温室で開花時期を調整し、約1カ月半のイベント期間中に4回植え替えをするが、想定通りに咲いてくれるか、いつも不安だという。
 責任の重さにプレッシャーを感じる日々。だが、来場者からの「今年もきれいだった」「毎年楽しみにしている」といった言葉に触れるたび「また頑張ろう」と自らを鼓舞している。
 「HTBにとって、花はなくてはならないもの」。30年働いてきて今、あらためて強く実感している。「進化を続け、お客さまが一年中、花で癒やされる街にしたい」。美しい花々がこれからも、オランダの街並みを彩り続ける。


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