子ども3人、4000万の住宅を希望する20代公務員夫婦、妻が専業主婦になっても叶う?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、26歳、公務員の女性。同い年で公務員の夫と1歳の子どもと暮らす相談者。将来は子どもは3人、4,000万円の住宅購入を希望していますが、子育てしながら正社員として働くのは厳しそうなので、相談者が専業主婦になっても家計はもつのかが知りたいと言います。FPの氏家祥美氏がお答えします。


私(妻)が正社員ではなくパート勤務になっても家計はもつのか、またその場合住宅購入や第3子を考えられるのか知りたいです。

現在、夫婦とも公務員で、私は育休2年目に入るところです。育休手当は1年間だけいただき、現在は無給です。夫の部署は残業が多いためその分収入が高くなっていますが、来年以降は残業のない部署に回されそうで、その場合収入は21万ほどになると思われます。

私はフルタイム復帰すると月収20万ほどですが、子育てをしながら正社員共働きをするのは精神的にきつそうだと感じており、家計が許すなら辞めて子どもが小学生になる頃にパートで扶養内で働きたいと考えています。

子どもは二人は欲しく、できれば大学まで公立、無理なら高校まで公立に行かせたいです。

家については、賃貸のままでもいいですが、できれば戸建て(4,000万円)の購入も目指したいです。

車の購入予定は今のところありません。また、第3子まで生むとすると、家計がどうなるのか知りたいです。長くなりましたが、アドバイスをいただけますと幸いです。

【相談者プロフィール】

・女性、26歳、公務員(育休2年目)

・夫:26歳、公務員 ・長女:1歳11カ月

・住居の形態:賃貸(大阪府)

・毎月の世帯の手取り金額:28万円(夫のみ)

・年間の世帯の手取りボーナス額:100万円(夫のみ)

・毎月の世帯の支出の目安:18万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:5万5,000円

・食費:5万5,000円

・水道光熱費:1万5,000円

・保険料:5,000円

・通信費:8,000円

・その他:日用品2万円、交際費1万円、娯楽費1万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:4万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:20万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,540万円

・現在の投資総額:160万円(つみたてNISA二人分40万円×2、ジュニアNISA80万円)

・現在の負債総額:0円

氏家:今回のご相談者さんは、20代の公務員夫婦。現在1歳のお子さんを育てていますが、仕事と家庭の両立に不安を抱えています。将来的には、少なくとももう一人、できればあと二人のお子さんを希望していて、住宅購入の希望もあります。子育てが落ち着くまではしばらく家庭にとどまり、下の子が小学生になったらパートとして職場復帰をしたいと思っていますが、希望するライフプランをすべて実現することができるのでしょうか。一緒に考えていきましょう。

金融資産は1700万円。順風満帆な影に2つの不安要素

現在、妻であるご相談者さんは育児休業2年目で勤務先からの給料は無いため、夫の収入だけで生活しています。手取り月収は28万円ですが、毎月の支出は18万円に抑えて、残りは貯金を4万円、残りは夫婦のつみたてNISAとして堅実に貯めています。年間100万円あるボーナスからも20万円を貯金しています。月々10万円×12か月+ボーナス貯金20万円ですから、片働きの状態でも年間140万円を貯めていることになります。

共働きでダブルインカムだった出産前は、もっとハイペースに貯めていたのでしょう。ご夫婦で26歳という若さにして、すでに1,700万円(貯蓄1,540万円、投資160万円)の金融資産をお持ちです。

このままいくと順風満帆に見えますが、将来的な不安要素を抱えています。ご相談者さんが仕事を辞めて、しばらく子育てに専念したいと考えていること。さらに、今年から夫の部署が異動になり収入が21万円に減りそうなことです。月収が28万円ある今は貯金と投資を合わせて月々10万円貯められていますが、収入が7万円減少することで、貯蓄可能額が月々3万円に下がります。

4000万円のマイホーム購入計画。家計にはどう影響する?

現在は家賃5万5000円の賃貸に住んでいますが、将来的に4,000万円の一戸建てを購入したいという希望があります。仮に物件価格の3割相当の1,200万円を頭金として入れて、諸費用も別途貯蓄から出すとした場合、残りの2,800万円の住宅ローンを組むことになります。仮に金利1%、35年ローンを利用する場合、月々の返済額は約7万9,000円となります。現在の住居費が5万5,000円ですから、現在より住居費の負担が2万4,000円高くなることになります。

なお、住宅を購入すると住宅ローン控除が利用できます。制度改正があり、2022年から2025年12月末日までに入居した住居については、一定要件を満たした場合、住宅ローン残高の0.7%が10年間もしくは13年間控除されることになります。ただし、住宅購入後は火災保険や地震保険、固定資産税なども負担することになります。年数がたてばメンテナンス費も必要になります。住宅ローン控除とそうした経費を相殺すると考えると、家計へのプラス効果は期待できません。

子どもの教育費準備の目安は?

続いて、教育費について考えていきましょう。現在、育児休業中でお子さんは保育園等に通っていませんから、保育料や教育費はかかっていません。いずれお子さんが幼稚園か保育園に行く場合も、3〜5歳は無償化の対象になりますから、イベントや給食の食材費、通園バス代などの実費を負担するだけで済むでしょう。

お子さんの進学コースは、基本的に高校までは公立で考えていますから、学校教育費はその時々の家計からねん出することになります。塾代や習い事代なども同様です。お子さんの人数が増えるとその分、教育費負担も増していくでしょう。

大学は私立の可能性もあることを想定すると、大学入学までに500万円程度の貯蓄をしておきたいところです。児童手当の所得制限にかからない場合、0歳から児童手当を貯め続けると200万円前後貯められます。児童手当のほかに、月々1万5,000円ずつ貯めていくと、大学入学までに300万円以上になりますから、児童手当と合わせると500万円以上用意できます。

妻が仕事を辞めると貯蓄ができなくなる

ここまで見てきたところ、夫の収入が7万円減ることで、毎月の貯蓄可能額(投資含む)が10万円から3万円に減少します。近い将来、4,000万円の物件を購入する場合、毎月の住宅ローン負担が現在の家賃に比べて2万4,000円増えることになります。幼稚園や保育園で負担する実費が仮に6,000円だとすると、住宅ローンの返済と幼稚園・保育園代が始まった時点で毎月の貯蓄ができなくなります。

そのほかに、お子さんの将来の教育費の積立1万5,000円×人数分と、お子さんの塾代や習い事代などその時々の教育費については、日々の家計からねん出する必要があります。塾代などにあまりお金をかけない暮らしであれば、今後夫の収入が順調に増えていき、ご相談者さんがパートとして復職できれば、家も教育もぎりぎりカバーできるかもしれない、というところでしょうか。

妻の専業主婦計画の3つの注意点

ご相談者さんが仕事を辞めて専業主婦になるプランには、3つの注意点があります。

1つめは、お子さんをあと2人出産して、末のお子さんが小学生になるまで働かないとした場合、10年以上専業主婦期間が続く可能性があることです。専業主婦期間は将来に向けた貯蓄ができないとなると、この期間は将来に向けた教育費が貯められません。この時点で、ここまでのお話に無理がでてきます。

2つめは、住宅購入の頭金として、貯金の大部分を使ってしまうことです。専業主婦期間に教育費を貯められないのであれば、すでにある貯蓄を将来の教育費にあてるという考えもできますが、その場合には、マイホームの頭金として今ある貯金を使えなくなります。住宅価格を大幅に引き下げて、購入時期も遅くするなどの選択肢も出てきます。

3つめは、暮らしの変化です。お子さんの人数が増えると、日々の教育費に加えて、食費や水道光熱費など日常の生活費も増えていきます。まだご夫婦とも若いので、今後収入が増えていくことが期待できますが、お子さんが二人、三人と増えていき、成長していくことを考えると、いまよりも支出も増えていきます。お子さんが中高生になって塾代などもかかってくる頃には、苦しい状況になるかもしれません。

共働きで夫婦協力していくなら夫の残業減少はプラス要因に

ここまで見てきて、ご相談者さんご自身はどのように感じたでしょうか?

3人産んでマイホームを取得することが絶対に無理とは言いませんが、その場合は物件価格をかなり引き下げるか、お子さん達には奨学金を利用してもらうなど何かしらの調整が必要になります。これまでとても堅実にハイペースで貯蓄をしてきたご相談者さんからするとそんな未来は不安に感じるかもしれませんね。

来年から夫が7万円の収入ダウンになるということですが、それは残業の無い部署に異動になるからということでしたね。それは専業主婦を前提にしたマネープランではかなりの痛手となりますが、ご相談者さんが職場復帰をして共働きをしていく前提で考えた時には、実はありがたい状況なのではないでしょうか。

これまで、育児休業期間中、ひとりで家事や子育てをする時間が長かったと思います。夫のサポートを得ながら、ひとまず育休から復帰してみてはいかがでしょうか。フルタイムで復帰をするとご相談者さん自身の収入が20万円見込めます。例えば、この半分はなかったものと考えて、子育てサポートなどのサービス利用に使ってもいいと考えてみてはいかがでしょうか。毎月10万円を使っても手元に10万円は残るので、現在の貯蓄ペースを維持できます。その方が家族の明るい未来への近道のように私には思えます。

最終的に何を優先するのかは、ご自身とパートナーです。ふたりでしっかり話し合って二人にとってのベストな選択を考えてみましょう。

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