「笑顔戻ってほしい」 ウクライナの平和願い写真展 被爆者の小川忠義さん(78)

キエフやオデッサの人々の写真を見ながら「この人たちが戦っていると思うと悲しい」と話す小川さん=長崎市内

 ロシアの侵攻を受けるウクライナの平和を願い、長崎市の被爆者でアマチュア写真家の小川忠義さん(78)が10年前にウクライナを訪れて人々の笑顔や町並みを撮影した写真展を29日から、同市松が枝町のナガサキピースミュージアムで開く。小川さんは「写真を見てウクライナの人々に思いをはせてほしい」と語る。
 笑顔でポーズを取る若者や、「ハローキティ」の帽子をかぶった子ども-。首都キエフで2012年に撮影した写真の数々を見つめ、小川さんは眉をひそめた。「この子たちは今ごろ地下室にいるのか、それとも銃を握っているのか…」
 小川さんは同年、非政府組織(NGO)ピースボートの「ヒバクシャ 証言の航海」に参加。21カ国を回り被爆体験を語るなどした。同年4月にはウクライナを訪問。キエフや南部の港町オデッサ、原発事故があったチェルノブイリを巡った。
 古い町並みが残るキエフは美しく、オデッサは活気があった。人懐こい人が多く、カメラを向けると快く応じてくれた。チェルノブイリではガイドをしてくれた青年のことが印象に残っているという。
 今年2月、侵攻が始まった。あの時滞在したホテルに近い、キエフの独立広場がテレビに映った。ぬいぐるみを握りしめて泣く子どもの姿を見て「何かせないかん」との思いに駆られ、写真展を思い付いた。
 今月23日に日本の国会であったゼレンスキー大統領の演説をテレビで視聴した。子どもや孫のためにとの言及があり、「大統領でなく一人の家庭人としての言葉」が胸に迫った。核使用の可能性にも触れ、核の脅威をちらつかせるロシアに被爆者として憤りを感じた。
 そして、現地で出会った人たちに笑顔が戻ってほしいと心から思った。写真展のタイトルは「ウクライナに笑顔を!」と銘打った。
 写真は約50枚。平和を謳歌(おうか)していた人々の笑顔が印象的だ。「こんなにきれいな町を攻撃するのか。止めないといけない。一人でも多くの人に見てほしい」と願っている。
 写真展は小川さんが事務局を務める「ICANサポート・ナガサキ」が主催。4月24日まで。

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