妻にハンデのある手取り月21万円の夫婦。2人目の子を産んだら老後資金はどうなる?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、36歳、パートの女性。会社員の夫と1歳の子どもと暮らす相談者。相談者は障害がありフルタイムで働けない状況だと言いますが、3歳差で2人目を希望しています。現状の収入と貯蓄で可能でしょうか。FPの鈴木さや子氏がお答えします。


子ども2人目を希望していますが、現在の収入と貯蓄額で実現可能かがわからないため、踏み切れません。住宅購入予定はなく、夫両親の持ち家(ローンなし)に将来住む予定です。現在1歳の子どもは保育料無償となる3歳からこども園入園希望、2人目は3歳差で希望しています。夫は会社員で手取り20万程度、私は障害がありフルタイムで働けません。

現在は産後半年から在宅ワークで月1万円~1万5,000円ほど収入を得ています。夫の通信費はキャリアスマホのため(妻の私はガラケーで安いです)、今後格安プランにするなど考え固定費を削減し、月2万5,000円先取り貯蓄し、年間100万円貯蓄を目指したいです。また、子ども2人を育てた場合と現状一人のまま育てた場合の老後資金についても気になります。

どうぞよろしくお願いいたします。

【相談者プロフィール】

・女性、36歳、パート

・夫:39歳、会社員 ・子ども:1歳(家庭保育)

・住居の形態:賃貸(近畿地方)

・毎月の世帯の手取り金額:21万円(夫20万円、妻1万円〜1万5,000円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:70万円

【毎月の支出の内訳】

・毎月の世帯の支出の目安:17万円

・住居費:6万円

・食費:4万5,000円

・水道光熱費:1万5,000円

・教育費:5,000円

・保険料:1万円

・通信費:6,000円(夫5,000円、妻1,000円)

・車両費:5,000円

・お小遣い:2万円(夫1万5,000円、妻5,000円)

・その他:4,000円(特別費の積み立てなどはしていません)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:1万5,000円

・ボーナスからの年間貯蓄額:70万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):700万円

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:0円

家計の内訳を拝見し、堅実にやりくりをされている印象を持ちました。障害をお持ちの中で、着実に収入を得ているご相談者様、とても頑張っていらっしゃいますね。やりくり上手ですが、教育費も増えていくため、数字で今後の家計状況をチェックし、より安心できる家計プランを一緒に考えてみましょう。

子どもが1人増えると約1000万円貯蓄が減る

教育費は、子どもの数や進路、習い事の種類などによって、金額が大きく異なります。1人あたり1,000万円以上かかるため、増えるほど家計には大きな影響があるでしょう。しかし昨今は、経済的な理由で希望の進路を断念しなくて済むよう、高校や大学の無償化制度も整いつつあります。早いうちからの教育費積立をしておくとともに、もし不足した時に支援制度を最大限活用できるよう、日頃から情報収集に努めるのがおすすめです。なお、児童手当は全額貯めておきましょう。

ここでは、お子様が1人の場合と2人の場合で、どの程度家計に差が生まれるか、今後25年間の貯蓄残高の推移を見てみましょう。試算条件は下記のとおりです。

・手取り収入:就労収入は変動なし。子どもが15歳までは児童手当を加算。退職金は1,000万円と仮定。60歳以降は約7割
・生活費:初年度85万円、年2%ずつ増加。末子大学卒業後8割
・家賃:夫実家への居住時期が不明なため、住居費は25年間一定と仮定(更新手数料等は未反映)
・保険料:内容不明のため、25年間変動なしと仮定
・臨時費用:60歳まで年30万円。61歳以降50万円(医療費等を考慮)
・教育費:高校まで公立、大学は私立文系(習い事の平均費用も入っている)

子どもが1人の場合は?

夫が60歳になる前に年間収支が赤字になるのは、大学時期の3年間だけであり、着実に資産形成ができています。25年後の貯蓄残高は約2,292万円と、老後資金としても問題ありません。ただし、退職金があることを前提としています。退職金がない場合、お子様の大学入学以降はずっと赤字が続き、25年後の貯蓄残高は1,292万円となります。それでも、現在の生活レベルを保ったままであれば、年45万円ほどを貯蓄から取り崩して生活できますので、約29年間資金は底をつきません。

子どもが2人の場合は?

教育費が2人分かかることで、お子様が16歳、13歳になった年から、夫59歳の年まで赤字が続きます。それでも、資金が底をつくことはなく、25年後の貯蓄残高は1,277万円。夫94歳までの老後期間とすると、年40万円ほど貯蓄から取り崩すことができ、大きな心配は要らないでしょう。ただし退職金がないと277万円となるため、かなり心もとなくなり、対策が必要です。

貯蓄を増やすためにできること

現在も、とてもやりくり上手なご相談者様。特にお金の使い道で見直すところはありません。とはいえ、もし退職金がないなど、経済的に2人目のお子様は悩ましいかも……と思われた場合、できる見直しとしては、夫実家に同居するなど、住居費を減らすことがあげられます。

月6万円の家賃がかかっており、もしこの金額を月1万円など大幅に減らすことができれば、お子様が2人、そして退職金がなくても、25年後の貯蓄残高は1,837万円となり、問題ないでしょう。つまり、月5万円の収支改善ができれば、お子様をあきらめなくて済むのです。

ちなみに、他の支出については、ご相談者様が書かれているように、格安スマホへの見直しはとてもよいでしょう。ただし、通信費以外は削らないほうがよいと感じました。今後大きく膨らんでいくことは避けたいですが、十分頑張っていらっしゃいます。お子様が小さいうちは、思い出も作って欲しいですし、食費なども削らなくて良いでしょう。

収入を増やすために

住居費の見直しが今すぐは難しいのであれば、収入を増やすことを目指しましょう。最初は月1万円でも構いません。夫と協力して、無理なくできることを探してみましょう。なお、先ほどの試算は、夫の収入はずっと変わらないと想定しています。夫が昇給したり、副業などすることができれば、結果は大きく変わりますよ。

また、ご相談者様は障害年金の検討はされていますでしょうか? 障害者手帳がなくても受け取れる場合があるため、お住まいの近くの年金事務所や年金相談センターに相談してみると良いでしょう。もし少しでも受け取れれば、家計はかなり改善します。

ご夫婦で希望を叶えるための話し合いを

お伝えした今後の貯蓄残高の推移は、いただいた家計情報と筆者の憶測のみを反映したものです。家計情報にない支出や収入はもちろん、ご夫婦それぞれの今後のライフプランを伺っていないため、この試算結果がすべてではありません。この結果をたたき台として、お子様のこと以外にも、どんな生活をしていきたいか、どんなふうに働いていきたいか、住まいはどうしたいか、老後はどんなふうに過ごしたいかなど、ライフプランについてご夫婦で話し合いをすることをおすすめします。

家族でコミュニケーションをとることが、無理せず資産形成するための一番の方法です。互いの希望をじっくり話し合い、その中でできることを見つけて、一緒に取り組んでくださいね。応援しています!

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