佐世保市ふるさと納税 最多へ 2月末に11万2300件超 寄付の“実入り”アップ課題に

ふるさと納税の返礼品を選ぶカタログ(右下)を活用し、寄付額の増加を目指す佐世保市担当課(写真はコラージュ)

 ふるさと納税で長崎県佐世保市に寄付した件数が本年度は2月末時点で11万2300件を超え、過去最多となった2015年度の約11万5500件を超えるペースで推移している。ただ、寄付額は約19億9600万円で、最多だった15年度の約26億4800万円に到達するのは困難な状況。かつては寄付額で全国上位だったが、近年は返礼品競争の過熱で順位が低下。寄付の“実入り”をどう伸ばすかが課題となっている。

佐世保市への寄付額と寄付件数の推移

 「本年度の件数は最も多かった15年度を上回るペース。ただ、総額が…」。7日の市議会企業経済委員会。ふるさと納税の速報値を報告した市担当者の表情はさえなかった。
 ふるさと納税は、全国の住民が応援したい自治体に寄付をすれば、住民税が軽減される制度。寄付を受けた自治体は返礼品を贈ることができる。
 同市は08年度から制度を導入。15年度に返礼品を選ぶカタログを配布すると、地元の海産物や肉類などが好評を得て、寄付額が急増した。同年度は全国のランキングで6位に入り、県内のトップに躍り出た。
 その後は返礼品をPRして寄付を呼び込む競争が全国で過熱。高額商品や地場産品と無関係な家電などを贈る自治体が出てきた。
 総務相は17年度以降に2度の通知を出し、返礼は「(寄付額の)3割以下」で「地場産品」とする「良識ある対応」を要請。ただ、強制力はなく、大阪府泉佐野市などがギフト券を贈り続けるなど国に従わないケースが続いた。
 佐世保市は通知を順守し、競争激化のあおりを受けて寄付額の全国順位は低下。20年度は約20億9千万円を集めたが56位にとどまった。
 国は19年に地方税法を改正。通知内容などをルールとして厳格化し、守らない自治体は制度への参加を認めないとした。
 本年度に佐世保市への寄付件数が伸びている要因について、同市ふるさと物産振興課は「競争が落ち着き、泉佐野市などへ向かっていた寄付先が一定流れてきた」と分析。一方、インターネットでの申し込みが普及し、複数の寄付先を閲覧しやすくなったため、以前と比べて寄付が小口化し、金額が伸びにくくなっているという。
 同市は魅力的な返礼品の開発に力を入れ、22年度の寄付額の目標を25億円と設定する。同課は「これからは、郷土や地域を応援する思いを集める“純粋な競争”になっていく。佐世保のファンを地道に増やすことで寄付件数を伸ばし、総額を押し上げたい」としている。


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