【追う!マイ・カナガワ】横浜・MM線の車両留置場 住民反対も工事再開なぜ(上)

観光客でにぎわう港の見える丘公園。この地下に車両留置場が建設される=横浜市中区

 横浜駅─元町・中華街駅を結ぶみなとみらい(MM)線の車両留置場の建設工事が3月上旬、再開した。運行する第三セクター・横浜高速鉄道(横浜市中区)は工事を約2年間中断して地元住民に説明してきたが、反対する一部の地権者とは平行線のままという。「会社の説明が二転三転する中で一方的に工事が始まった」。地元住民から「追う! マイ・カナガワ」取材班に寄せられた疑念の声を追った。

◆港の見える丘公園の真下

 小高い丘から横浜港を一望する港の見える丘公園(同区)。色鮮やかな花々が咲き、草木が茂る緑地の地下が騒動の舞台となった。「この真下に巨大なトンネルができるんです」。地元町内会の男性理事(74)が指を差す先には、住宅も立ち並ぶ。

 車両留置場の建設地は、MM線終点の元町・中華街駅から山手方面へ抜ける地下部分。同駅から同公園まで全長約590メートル、深さ20~50メートルの地盤を掘り進めたトンネル内に同線の車両4編成を留め置く計画だ。

 予定地の地上部分には同公園のほか、住宅も18軒ある。同鉄道は地権者の住民らとの協議を進めてきたが、関係者によると、これまでに地下を利用する「区分地上権」に関する補償金契約を交わせたのは数軒にとどまる。

 一部の住民らが不安視するのは、都市部の地下工事現場で相次ぐ地面陥没だ。

 2016年以降、福岡市の博多駅前、横浜市港北区の新横浜駅そばで、いずれも鉄道のトンネル敷設工事が引き金となり陥没が発生。20年に東京外環道の地下工事(東京都練馬区)で起きた陥没では、東京地裁が今年2月に一部工事の差し止めを命じたばかりだ。

◆方針転換に住民は不信感

 同鉄道は17、18年の説明会で担当者が「地権者が一人でも拒否すれば工事はしない」と発言していたというが、21年には「これまでの説明は誤りだった」と撤回。反対があっても工事を進める方針に転換した。

 さらに、今年2月下旬の説明会では3日後の3月1日から工事を再開すると一方的に通達した。当初は建設に理解を示していた地権者の男性は、急転直下の工事再開に「あまりに急すぎる。納得できない」と反対の立場に回った。

 3月8日。工事に反対する住民側らが同鉄道の森秀毅社長と面会する場が初めて設けられた。

 「地権者が一人でも反対したら工事を進めないと説明していたはず」「説明会の3日後に工事を始めるなんてあんまりだ」。こう訴える住民らに対し、森社長は請うように言った。

 「東急電鉄からは一刻も早く(間借りしている車両基地の敷地を)明け渡すよう求められていて、工事を進めなければならないんです」

© 株式会社神奈川新聞社