夫は単身赴任で年収750万。年収450万の妻が仕事を辞めて同居したら家計はどうなる?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、39歳、単身赴任中の公務員男性。妻を単身赴任先に呼び寄せて同居を考えていますが、妻が仕事を辞めることによる収入減に加え、単身赴任手当もなくなるため、同居後の生活が心配だと言います。シミュレーションの結果は? FPの氏家祥美氏がお答えします。


単身赴任を解いて、妻を地方である私の出身地に呼び寄せたいと考えています。妻と新居で同居を始めた時、どの程度までの家賃が妥当か、また、世帯収入減となる中で2台目の自動車を持てるか、について助言いただきたいです。

私は月手取り38万円、額面年収750万円。単身赴任手当は月4万4,000円出ていますが、同居を始めれば手当は無くなります。住居手当は、現在の賃貸アパート5万5,000円に対して現在2万4,200円出ていて、探している条件での新居の家賃相場は7万円前後で、この場合の住居手当は2万7,000円程度となります。

また、現在は小型普通車を1台所有。駐車場代は〜3,000円程度かかります。妻の車は必要なら軽自動車を購入(+駐車場代2,000〜3,000円)、必要なければタクシーや原付、自転車等でまかないます。なお、私の趣味で大型バイクを所有していて、ランニングコストは年20〜40万円ほどです。同居後も手放す予定はありません。

妻は現在東京都で賃貸住まい、額面年収450万円程度ですが、移住に伴い無職になり、再就職は当面考えていません。子どもの予定もありません。アレルギーや歯科通院により妻の医療費が少しかかり、年20〜30万円ほどとなります。無職になった直後の年の健康保険料が心配です。

現在は夫婦完全別会計で完結しています。私の方は、現金預金とつみたてNISA(最大40万円)やiDeCo(月1万2,000円、投資信託、ふるさと納税による節税などを駆使し、預貯金は年230万円ほどとなります。下記の収入支出情報は、同居後の1馬力化を考えて、基本的に私の現在状況について記すこととします。

【相談者プロフィール】

・男性、39歳、公務員 ・妻:37歳、会社員(東京在住)

・住居の形態:賃貸(福島県)

・毎月の世帯の手取り金額:38万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:85万円

・毎月の世帯の支出の目安:23万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:5万5,000円

・食費:5万円

・水道光熱費:1万1,000円

・保険料:3万6,000円

・通信費:1万1,000円

・車両費:4万5,000円(車・バイク含む)

・その他:2万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:5万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:80万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,250万円

・現在の投資総額:240万円

・現在の負債総額:0円

氏家:今回のご相談者さんは福島県で単身赴任中の公務員。会社員の妻は東京に残り、アパートでひとり暮らしをしています。ご相談者さんは今後、妻を呼び寄せて単身赴任生活を終わりにしたいと考えていますが、会社員の妻が仕事を辞めて二人暮らしを始めても生活が成り立つかを不安に感じています。一緒に考えていきましょう。

単身赴任生活の家計の状況を整理してみよう

まずは単身赴任をしている現在の生活費を見ていきましょう。夫婦別会計ということで、夫であるご相談者さんの家計を軸に見ていきます。

ご相談者さんは手取り月収38万円のうち、毎月の生活費は23万円と余裕のある生活をしています。収入の中には、単身赴任手当が月4万4,000円含まれるほか、現在の家賃5万5,000円に対する住宅手当も2万4,200円含まれます。

・毎月の世帯の手取り金額:38万円(単身赴任手当月4万4,000円、住居手当2万4,200円含む)
・毎月の世帯の支出の目安:23万円

年間の貯蓄額は230万です。ボーナス85万円のうち80万円を貯蓄に回しています。残りは毎月の貯蓄やつみたてNISA、iDeCoなどを組み合わせて、平均すると毎月12万5,000円を貯められている状況です。

・年間の貯蓄額:230万円(ボーナスから80万円、1か月あたり12万5,000円程度)

生活費23万円の内訳は以下のとおりになります。

・住居費:5万5,000円
・食費:5万円
・水道光熱費:1万1,000円
・保険料:3万6,000円
・通信費:1万1,000円
・車両費:4万5,000円(車・バイク含む)
・その他:2万円

二人暮らしを始めた後の家計予測

続いて、妻を福島県に呼びよせて、二人暮らしを始めた場合の家計を予測してみましょう。単身赴任を辞めると単身赴任手当4万4,000円がなくなります。住まいは今よりも広くする必要があるため家賃は上がりますが、家賃を7万円にした場合、家賃補助は2万7,000円に増額します。

・毎月の世帯の手取り金額:33万9,000円(単身赴任手当無し、住居手当2万7,000円含む)

続いて支出の内訳をみていきましょう。住居費は現在5万5,000円のところ7万円になります。車両費は現在月額4万5,000円ですが、妻用に軽自動車を購入するとした場合、新しい自動車用に別途車両費がかかります。軽自動車の維持コストをここでは仮に1か月あたり2万円(駐車場代が月々3,000円、ガソリン代やメンテナンス費用、自動車保険代、自動車税、車検費用などをすべて含む)とすると、月々の自動車費は6万5,000円になります。

このほか、新たな支出として妻の通院代があります。「アレルギーや歯科通院により妻の医療費が少しかかり、年20〜30万円ほどとなります。」とあったので、医療費として月額2万5,000円を計上しておきましょう。

住居費と車両費、医療費以外の支出は、二人暮らしになると現在の1.3倍程度かかるとして計算してみましょう。内訳は以下の通りになり、1か月あたりの支出は合計で32万6,000円になると予測できます。

・住居費:7万円
・車両費:6万5,000円
・医療費:2万5,000円
・食費:5万円×1.3=6万5,000円
・水道光熱費:1万1,000円×1.3=1万4,000円
・保険料:3万6,000円×1.3=4万7,000円
・通信費:1万1,000円×1.3=1万4,000円
・その他:2万円×1.3=2万6,000円

月収が33万9,000円、支出が32万6,000円ですから、毎月の貯蓄可能額は1万3,000円となります。現在の12万5,000円に比べると月々の貯蓄額は大きく減ってしまいますが、ボーナスはこれまでどおり80万円貯蓄ができると思われます。年間の貯蓄可能額は、1万3,000円×12+80万円=95万6,000円になります。

妻が無職になった後の健康保険はどうなる?

「(妻が)無職になった後の健康保険料が心配です」とあったので、退職後の健康保険の選択肢についてご説明をしておきます。

選択肢は大きく3つあります。1つ目がこれまで勤務先で加入していた健康保険に退職後も加入し続ける「任意継続被保険者」という方法です。退職時の報酬月額もしくは加入者全体の平均報酬月額を基準として保険料が決まります。会社員の健康保険料は労使折半ですが、退職後はこれまで会社が負担していた分も、加入者が負担することになります。

2つ目が住まいのある自治体で加入する「国民健康保険」です。こちらは前年の年収が基準となり保険料が決まります。

3つ目が「家族の被扶養者」になる方法です。被扶養者になれば、保険料負担が全くいらないのが最大のメリットです。加入時とその後もしばらく働かない、もしくは扶養枠の範囲内に収入をとどめるのであれば、妻は健康保険料も年金保険料も支払うことはありません。収入の無い妻を扶養するのであれば、扶養する側のご相談者さんの社会保険料負担についても、減ることはあっても増える心配はありません。

今回のシミュレーションの結果は

現在39歳と37歳のご夫婦で貯蓄+投資=1,490万円をお持ちです。子どもの予定やマイホームを購入する予定も特にないということですから、大きなお金が数年以内にまとまって出ていく予定はありません。

単身赴任生活を辞めて二人暮らしになることで、毎年の貯蓄可能額は230万円から、95万円程度に減るものの、それでも資産を増やしていける見込みです。いまよりも広い家を借りて二人暮らしを始め、自動車を2台持つようになっても、大きな問題はないでしょう。

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