33年ローンが残る家を50代で住み替えたい30代夫婦。手取り年収750万、希望は現実的?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、30代半ばの共働き夫婦。現在、2,600万円、33年の住宅ローンが残っている住宅に住んでいますが、50代半ばに住み替えを希望しています。2歳と6歳の子供の教育費がこれからかかってくるなか、現実的に可能でしょうか? FPの渡邊裕介氏がお答えします。


30代半ばの夫婦です。2歳と6歳の子供がいます。

現在、2,610万円・33年のローンの支払いが残っていますが、50代後半には今の家を住み替えたいと思っています。教育費もまだまだ貯めないといけませんが、現実的に、住み替えは可能でしょうか?

また、その後の老後資金についても気になります。退職金はありますが、金額は不明。公的年金は夫婦二人で月額22万円です。

【相談者プロフィール】

・女性、36歳、公務員(看護師) ・夫:36歳、会社員(配送業)

・子どもの年齢:2歳、6歳

・お住まいの都道府県:神奈川県

・住居の形態:持ち家(マンション・関東地方)

・毎月の世帯の手取り金額:49万5,000円(妻時短勤務中25万円前後、夫24万5,000円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:150万円

・毎月の世帯の支出の目安:約30万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:10万6,000円

・食費:9万円

・水道光熱費:7,000円

・教育費:2万6,000円

・保険料:6,200円

・通信費:4,200円

・車両費:1万2,000円

・お小遣い:6万円

・その他:1万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:3万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:136万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):413万円

・現在の投資総額:276万円

・現在の負債総額:2,610万円(住宅ローン)

渡邊:こんにちは、ファイナンシャルプランナーの渡邊です。将来の住み替えのご相談です。現在36歳で、住み替え希望が50代後半とのことですので、ちょうど下のお子さまが大学を卒業する頃に、夫婦お二人で住めるようなコンパクトな住宅を考えていらっしゃるのでしょうか。現在返済している住宅ローンは69歳までの返済となっていますので、50代後半でどれくらいの残債があるのか、それを踏まえた上で住み替える為にはどういった準備をしていけばよいのか考えていきましょう。

57歳からローンを組むことはできる?

下のお子さまが大学を卒業するのが57歳です。57歳時点での住宅ローンの残債がどれくらいか返済シミュレーションを作成してみますと、借入金利0.8%で変動しないと仮定すると約1,030万円程度の残債となります。すなわち、このタイミングで住み替えるということは、この時点でご自宅を売却をしてローンを相殺した上で、キャッシュ及び再度住宅ローンを組んで購入する必要があります。

まず、57歳時点で住宅ローンを組むことを考えるかどうかですが、お仕事を65歳までと考えても、57歳から住宅ローンを組むのは現実的ではありません。一般的には80歳までローンを組める金融機関が多いですが、審査は当然厳しくなります。

もし住宅ローンを組むとしたら、その時の手元資金が潤沢にあり、キャッシュで購入することもできるけれど、あえて住宅ローンを組むケースだと思われます。その時点でのローン金利が低いような状況であれば、このような手段も取ることは可能でしょう。

いずれにしても、住み替えを考える為には57歳時点である程度の購入資金を準備する必要があります。

自宅の売却評価額を調べてみましょう

まずは、57歳時点でどれくらいの金額で売却できるかを想定する必要があります。その為に、現在お住まいのエリアで駅からの距離や間取りや広さなど同条件で築25年程度のマンションがどれくらいの金額で売りに出ているのかを調べてみましょう。もちろん、将来の不動産の価格の想定は難しいですが、一つの目安にはなります。そして、売却価格から残債の1,030万を差し引いた残りが手元に残るかたちとなります。

教育費や大きな支出の予測を立てる

次に57歳時点でどれくらいの貯蓄残高になっているのでしょうか。その為には、お子さまお二人の教育費がどれくらい掛かるのか、教育費以外にも掛かってくるであろう大きな支出について考える必要があります。

教育費は公立か私立かによっても必要な金額が変わってきます。今のうちから、どのような教育方針で進めるのか想定しておきましょう。特に、中学生以降は私立も含めて考えると教育費がかさむので、なかなか貯蓄ができなくなります。今から10年間が貯蓄できるチャンスです。

その他にも自動車の買い換えやリフォームなど、ある程度大きな支出になりそうな場合はシミュレーションに盛り込む必要があります。

老後資金の準備も並行して考える

老後の準備も合わせて必要となります。公的年金の受給額の試算が22万円/月とのことです。住居費も含めて22万円以内でおさまるのか、足りないのであれば月々いくら貯蓄を取り崩す必要があるのか試算してみましょう。

総務省による「2020年家計調査報告」によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の平均消費支出は22万4,390円/月とのことですので、仮に年金受給が22万円/月とするとほぼトントンの生活となります。ただ、これはあくまで平均となりますので、ご自身がどれくらいの生活を送りたいのか、その為に必要な金額に置き換えて考えていかなければ意味がありません。仮に25万円/月必要だと考えると月々3万円取り崩す計算になりますので、90歳まで生きると仮定すると、

3万円 × 12か月 × 25年 =900万円

となり、介護やその他支出を考慮すると、ここに最低でも500万円くらいは余裕を持たせたほうがよいでしょう。そうすると、65歳までの老後の準備として1,400万円程度必要になります。

目標を定め、優先順位をつける

現在、ご相談者の年間の貯金額は、投資以外で172万円とのことですので、手取り収入の30%以上を貯蓄に回している計算となります。現在は非常に良好な家計状況ではありますが、今後については子どもの成長と共に上昇するであろう食費や、教育費負担も考慮しましょう。

教育費負担やその他必要な支出をまかなった上で、どれくらい貯蓄が出来るでしょうか。将来の住み替えと教育費準備、老後準備など、主な経済的な目標に優先順位を付け、収入や支出などある程度仮定になりますがシミュレーションを作成してみてください。その上で、住み替えの優先順位が高く、何としても達成したい目標であるのであれば、いつまでにいくら準備をすればよいのかを逆算し今から準備していきましょう。

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