永田菊四郎氏の教え

 日本大学を巡る一連の背任事件で取引業者からリベートを受け取り脱税したとして、有罪が確定した前理事長は、偉大な先輩である永田菊四郎氏(1895~1969年)に顔向けできまい▲永田氏は平戸生まれの法学者。大正期に苦学して日大を卒業し、ドイツに留学した。帰国後に日大教授となり、民法学の権威として名をはせた。1958年から死去直前まで日大第5代総長を務めた▲晩年には私財を投じ故郷に永田記念図書館(紐差(ひもさし)町)を建設したほか、長崎日大高(諫早市)を創立した。「誠」を旨とし、多くの人に慕われた▲その教えは胸を打つものが多い。有名なのが山芋の逸話だ。子どものころ、貧しい実家を助けるため、安満(やすまん)岳で山芋を掘って売り歩いた永田氏。日大総長になり、ある年の入学式で風呂敷から山芋を取り出すと「学問の掘り下げには山芋掘りのように忍耐と広い視野が必要」と訓示した▲長崎日大高の第1回入学式に贈った言葉が「初めが大事、心せよ/本(もと)を重んじ、末(すえ)に走るな/望みは高く、身は低く」。万人に通じる人生訓だ▲「フェアプレーでゆけ。その精神は試験に向かっても、実社会に出てからでも、最も大事な道である」(著書「青春の誇り」)。日本大学の上層部は永田氏の教えをかみしめ再出発してほしい。(潤)

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