耳に十四の心あり

 漢字を偏や旁(つくり)といった“パーツ”に分解し、語呂合わせにする覚え方がある。「貸」という字は「代わりに貝を貸しとくれ」。「奏」は「三人と二人で奏でる」。「恋」の旧字「戀」は「糸し(いとし)糸しと言う心」で、どことなく味がある▲「聴」は「耳に十四(じゅうし)の心あり」。漢和辞典によれば、旁の「十四の心」の部分は「まっすぐ」を意味し、「聴く」とは「まっすぐ耳を向ける」ことらしい▲十四の心は語呂合わせだとしても、「たくさん心を傾ける」意味だと考えれば、この方がぴったりくる場合もある。あちこちで上がる声にさて、行政は耳を寄せ、心を尽くしたか▲県が佐世保市に誘致しようとしている「カジノを含む統合型リゾート施設」について、県議会は整備計画を認める議案を可決した。ゴーサインを受けて、県は近く国へ申請する▲4300億円を超える資金を調達する手はずだが、それをどこから集めるのか、金融機関の名も出資企業の名も、県は明かすと言っておいて明かしていない。不信の声が県議会で上がった▲行政がカジノ誘致の旗を振るのは「間違い」とする声も根強い。「声は聞いた」という行政が、ただ聞きっぱなしでは元も子もない。心して聴く、心して情報を公にする、心を砕いて説明する。「十四の心」でもまだ足りない。(徹)

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