42歳夫の希望は50歳セミリタイア。子ども3人はまだ小学生。達成は教育費次第?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、42歳、会社員の男性。パートの妻と合わせ、年間の手取り収入は1,000万円ほど。50歳でセミリタイアを希望していますが、小学生の子3人の教育費をまかなって、達成できるか不安だといいます。FPの意見は? FPの當舎緑氏がお答えします。


42歳、会社員です。パートの妻と合わせて、手取りの年収は1,000万円を超えるくらいです。50歳でセミリタイアを希望していますが、小学生の子ども3人(11歳、9歳、7歳)の教育費のピークがこれからであり、今のままの生活で達成できるか不安です。

現在の貯蓄は、270万円、投資に2,000万円ほど。50歳で退職した場合、退職金で2,200万円ほどもらえる見込みです。

住宅ローンの残債は2,200万円です。2010年に、物件価格4,200万円、借入3,350万円、金利0.875%、返済期間35年でローンを組みましたが、2022年3月に、金利0.389%、返済期間22年9カ月に借り換え、5月から返済が始まります。

【相談者プロフィール】・男性、42歳、会社員

・妻:40歳、パート(年間100万円程度)

・子ども:11歳、9歳、7歳(3人とも小学生)

・住居の形態:持ち家(マンション、東京都)

・毎月の世帯の手取り金額:75万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:120万円

・毎月の世帯の支出の目安:43万5,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:12万円

・食費:10万円

・水道光熱費:2万5,000円

・教育費:12万円

・通信費:1万円

・お小遣い:3万円

・その他:3万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:10万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:120万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):270万円

・現在の投資総額:2,000万円

・現在の負債総額:2,200万円(0.389%、返済期間22年9カ月、5月から返済開始)

當舎:セミリタイヤしたいという希望をお持ちですが、50歳を目標とするのであれば、あと10年もありません。今は手取りも多く、着実に貯蓄ができていますが、子どもの教育費は、小学生以降は増加の一途をたどります。教育費が増加すれば、老後資金に影響が出ます。ただ、いきなり「できない」と考えたくはないでしょう。セミリタイヤという目標のために、少しでもできることを考えてみましょう。

現状の問題点を解決するのが先

教育費が12万円かかっているのは、中学受験のための塾代でしょうか。子どもが小学生の時には、一般的に「貯めどき」のはずですが、12万円という金額は多いようです。

さらに家計の現状を把握するうえで、教育費以外にもう一点気になる点があります。保険料が書かれていません。おそらく、住宅ローンを返済中ですので、死亡や高度障害の状態になった場合に住宅ローン残額が全額返済される団体信用生命保険には加入しているでしょう。団体信用生命保険に加入していると、ローン返済者に死亡や高度障害など一定の保険事故が起こったときに住宅ローンの残債が返済され、そのまま自宅に住み続けられますが、生活費の補填にはなりません。

そのほかにも、リスクに対する保険、火災保険や賠償責任保険、医療保険など、何かあった場合の備えとして、3人の子どもを持つご家庭としては、リスクへの備えが十分ではないでしょう。いわゆる「自家保険」といい、保険に頼らない生き方ももちろんありますが、リスクを補填できるだけの資産があることが必須です。賠償責任保険や先進医療など、保険料に対して費用対効果の高い保険もありますので、支出は増えますが、子どもが小さいうちにはお守りとして加入しておくことは大切なことです。

教育費を左右する子どもの進路をどうするか

小学生の子ども3人に対して教育費が多めの月12万円は、中学受験をするための塾代だと想定してお話しします。子どもが中学受験をするかどうかは、将来の負担を左右します。今は、高等教育については就学援助制度ができていますので、たとえ高校で私立高校に進学しても、所得による条件はあるものの、学費の負担は軽減されます。セミリタイヤに当たって、今後の教育費が不安ということですが、子どもの進路をどうするか、どこまで子どもの希望を叶えるか、ご夫婦で話したうえで親の方針をすり合わせておきましょう。

教育費のための貯蓄をしないで奨学金に頼るご家庭もありますが、塾代や私立中学校、受験料などの負担など、教育費に関しては親の負担がまったくなくなることはないでしょう。子どもの内一人に私立中学の受験をさせるのなら、他の2人が希望した時にどうするのかは決めておいてください。中学校を私立にするか公立にするかで貯蓄できる金額がまったく異なります。平成30年と少し古い調査にはなりますが、かかる費用の差は2.9倍にもなります(文部科学省HP)。

参考:高校生の私立学校就学支援制度 文部科学省HP高等教育の就学援助 文部科学省HP

どこに住むか、どう生きるか、いくらで生活できるのか目標を立てよう!

男性81.64歳。女性87.74歳。これは令和2年に公表された日本の平均寿命です。50歳でリタイヤしても、それから約30年という長い老後生活が待ち構えているのです。2022年は、年金を75歳まで繰り下げる制度ができるなど、「できる限り現役で働く」ように政府も企業も舵を切っています。そんな中でのセミリタイヤの試みは勇気のいることですので、計画的に進めていかないと、一旦セミリタイヤを実現しても、生活費のためにまた現役に戻らざるを得なくなることもあり得ます。

生命保険文化センターの調査によると、老後必要な生活費は約22.1万円で、少しゆとりのある生活をするためには約36.1万円という結果があります。これは夫婦2人の場合ですので、子どもがいるということを想定して「ゆとりのある生活」の約36万円の収入が確保できることを目標とするのもいいでしょう。投資でも副業でも構いません。現在の投資総額が2,000万円ということですが、住宅ローン残高が約2,200万円あることから、差引すると実質の貯蓄として使える金額は、貯蓄の270万円と退職金の2,000万円。36万円で生活すると5年分にしかなりません。

あと10年で何ができるか

セミリタイヤをしたいのであれば、あと10年で何ができるか考えていきましょう。50歳でセミリタイヤする時期は、子どもたちが高校生と大学生という、教育費が一番かかる時期と重なります。所得によって就学援助があるからといっても、子どもにかかる教育費全額を奨学金などでまかなうことは現実的ではありません。子どもの希望を叶えるにはお金が伴いますから、教育費が終わらないと自分たちの老後まで考えられないという方が多くいらっしゃいます。あと10年でセミリタイヤするのであれば、自分たちだけでなく子どもたちにも自分の希望を告げて子どもたちにもお金の管理を任せるなど、家族それぞれがセミリタイヤ後の生活を思い描けるように計画を立てて家族内で共有するべきでしょう。

2つのポイントを意識して

今は手取りが月75万あり、相談文によれば年間で240万円ほどを貯蓄できている、一番「貯められる時期」です。子どもが小学生であるこの時期以降は、どんどん貯蓄は困難になります。食費や水道光熱費、塾や習い事の費用、子どもたちのお小遣いや通信費、交通費など、子どもの成長に伴って増える支出項目はいくつもあります。ただ、セミリタイヤがスムーズにできるかどうかのカギは教育費です。そして、セミリタイヤ後に収入の道を途絶えさせない、この2つのポイントを忘れず、今後の10年を過ごしてください。

老齢の年金は65歳から支給されますが、世界では、66歳や67歳など、65歳以降の年齢に受給が開始されるケースもあり、将来的に日本の年金受給開始年齢も下がっていくことは予想できます。年金が支給されるまでの収入を確保することはセミリタイヤのためには欠かせません。それができなければ、セミリタイヤの時期を後にずらすことも考えるべきでしょう。

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