読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、ともに31歳の共働き夫婦。これまでは贅沢をしてきたけれど、出産を視野に入れて家計を見直したいとのこと。見直しの際の支出の目安やマネープランの立て方へのアドバイスは? FPの高山一惠氏がお答えします。
妻の産休育休を考慮に入れて、今後の家計プランのアドバイスが欲しいです。
夫婦ともに31歳の共働きで、子どもがおらず贅沢な暮らしをしていますが、1、2年以内に子どもをもうけたいと思っています。2年後に2人目希望。また、今年は車の買い替え(850万円)を検討しており、将来のため総合的に家計見直し、再構築をしたいと思います。
夫婦ともに正社員で、夫は65歳まで働く予定。妻は50歳退職、以後パートの予定です。住宅補助があるので50歳まで賃貸。50歳から2LDKの中古マンションを予定です。車は13年ごとに同程度の金額のものに乗り換え予定。
【相談者プロフィール】
・男性、31歳、会社員 ・妻:31歳、会社員
・住居の形態:賃貸(東海地方)
・毎月の世帯の手取り金額:50万円(妻25万円・夫25万円)
・年間の世帯の手取りボーナス額:270万円(夫130万円、妻140万円)
【毎月の支出の内訳】
・毎月の世帯の支出の目安:53万円
・住居費:1万5,000円(住居費:120万/年⇒現地在住の場合住宅補助無〔7万/月〕。転勤で住宅補助、都内在住前提で〔10万円/月〕120万円/年とする)
・食費:10万円
・水道光熱費:1万3,000円
・教育費:3,000円
・保険料:7,000円
・通信費:1万7,000円
・車両費:4万円
・お小遣い:11万円
・その他:20万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:12万円
・ボーナスからの年間貯蓄額:0円
・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,000万円
・現在の投資総額:700万円
・現在の負債総額:0円
高山:ご相談ありがとうございます。現在は、共働きで特に節約なども意識せずに暮らしていらっしゃるようですが、近い将来、お子さんをご希望されていることや車の買い替えなども検討していらっしゃるとのことで、家計を大幅に見直したいようですね。確かにお子さんが誕生すると、生活が相当変わるので今からしっかりとシミュレーションしておくことが大切ですね。お子さんを授かることを前提に、今後のマネープランのポイントを考えてみましょう。
妻の産休・育休時の収入を把握する
現在、共働きで家計に余裕があり、特に節約などを意識せずに生活をされてきたようですね。とはいえ、1、2年以内に第1子、その2年後には第2子をご希望とのこと。計画通りに出産をするとなると、当面妻は産休、育休を取得することになり、当然のことながら収入が変化します。
今後家計を見直して節約をするにしても、収入がどれくらいになるのかを把握できなければ、具体的にどれくらい節約すればよいのか、貯蓄すればよいのかをイメージできないと思いますので、まずは、産休、育休を取得した場合の給付金を確認しておきましょう。
通常、会社員の人は、「産前の6週間(42日)と産後の8週間(56日)あわせて98日」はいわゆる産休として、休むことが認められています。そして、産休中の給料を補ってくれるありがたい存在が「出産手当金」です。健康保険に入っていれば、支給日額に会社を休んだ日数分受け取ることができます。
ちなみに、支給日額は、「支給開始日以前の継続した12カ月間の各月の標準報酬月額を平均した金額を30日で割り、その金額に2/3を掛けた金額」です。
あくまでもざっくりとですが、妻の収入状況から出産手当金は約69万円もらえると予想されます。
育休中は妻の月収は10万円程度減る予想
産休が終わると、今度は、育児休業に入る人は多いでしょう。原則として、子どもが1歳になるまで育休を取ることが可能です。育休中の収入減をカバーするのは、「育児休業給付金」です。
「育児休業給付金」は、雇用保険に加入していて、育児休業開始前の2年間のうち12カ月間、各月の労働日数が11日を超えている人が受け取れる制度。原則子どもが満1歳になるまで受け取ることができますが、認可保育園に申し込んだものの空きがなく、市町村から「不承諾」の通知書を受取っている場合には1歳6カ月まで延長することができます。さらに延長が必要な場合は、2歳まで取得することができます。
育児休業給付金の金額は、育休に入って最初の6カ月間については67%、その後の6カ月間は50%支給されます。
こちらもあくまでもざっくりとですが、妻の収入状況から育児休業給付金は約190万円もらえます。
参考までに産休、育休中の健康保険や厚生年金保険料は免除されます。保険料を支払わないからといって、将来の年金が減ることはありません。
上記のシミュレーションから育休中は、妻の収入が月に10万円程度減りますが、第2子の出産や出産後、時短勤務なのか、フルタイムで働くのかなどによっても収入の見込みが変わってきます。時短勤務の可能性なども考え、子どもが生まれてから最低でも5年は妻の収入減少の期間が続く可能性が高いでしょう。
まずは支出の「見える化」を!費目ごとに予算化までできると◎
今後出産して妻の収入が下がる、東京勤務になり月に10万円の家賃がかかるとなると、DINKsの今、節約するところは節約して、しっかり貯蓄していく必要がありますね。
現在は、DINKsですから、貯蓄は、手取り収入の2割以上、できれば3割できるのが理想です。
家計を拝見すると、毎月の世帯の手取り収入が50万円、それに対して支出が53万円となっており、毎月の支出が毎月の収入を超えている状態ですが、貯蓄欄を拝見すると、毎月12万円貯蓄できているとのこと。家計の状況に矛盾があるように見受けられますし、支出の「その他」の項目の金額も大きいのも気になります。
世帯年収が高いご家庭なので、夫、妻ともに自由になるお金が多いですから、お互いの支出についてチェックが甘くなりがちです。一度、きちんと、何にどれだけお金を使っているのかを夫婦で把握することが必要です。
その上で、これから家計を見直すにあたり、どの項目を減らすことができるのか夫婦で話し合いましょう。
夫婦でそれぞれ重視したい支出や節約しても差し支えない支出があると思いますので、夫婦で話し合って決めることが大切です。その上で、費目ごとに予算化できるとベストです。
理想の家計割合って?
とはいえ、費目ごとの予算をどうすればよいのかわからないという方も多いので、参考までに理想の家計割合を記載しておきます。
詳細な家計の状況がわからないので、あくまでも予想ですが、家計を拝見するところでは、通信費、食費、その他、夫婦のお小遣いなどを調整すれば、5万円〜10万円は削減できそうです。
今後の主なライフイベントを確認し計画的に貯蓄を!
今後予想される大きな金額がかかるイベントとしては、車の買い替え、子どもの教育費、住宅購入です。大きな金額がかかるイベントは、具体的にどれくらいの金額がかかるのかを把握することが大切です。
まず、今年車の買い替えで850万円となっています。こちらは、現在乗っている車を売却するもしくは下取りして買い替えるのかわかりませんが、まとまった金額の支出になりそうですね。現在の貯蓄から支払いをするのかと思いますが、基本的に病気や怪我などで働けなくなるなど、不測の事態に備えて生活費の6カ月分の貯蓄はキープしたいところです。
次に子どもにかかるお金の概算を考える
次にお子さんが生まれた場合の教育費ですが、出産時や子どもが小さいうちは、そんなにお金はかかりませんが、子どもが成長するにつれてお金のかかり方は加速します。
とはいえ、ひとくちにお金がかかるといっても、子どもの進学コースによってもかかるお金は全く違います。
参考までに幼稚園から大学まで、オール公立の場合には、子ども1人につき約1,000万円ですが、オール私立の場合には、子ども1人につき約2,500万円程度かかります。教育費準備の考え方として、子どもが高校を卒業するまでの学費は家計からやりくりし、大学の学費は、子どもが18歳になるまでに、300〜500万円を準備するのが基本です。
子どもが0歳から15歳まで支給される「児童手当」を使わずに貯めると、子どもが15歳の時に、約200万円貯まります。児童手当とは別に子どもが0歳の時から18歳まで毎月1万5,000円貯めると、324万円になります。児童手当と合計すると524万円になりますので、大学の学費はクリアできます。
中学、高校と子どもが私立に通う場合には、大学の資金のために貯蓄しつつ、家計から教育費として月額10万円程度を捻出できるかが、私立に通うことができるかどうかの目安になります。中学、高校と子どもが公立に通う場合には、家計から教育費として月額3〜4万円程度の支出が目安になります。ただし、一定の条件を満たせば、私立高校、公立高校どちらに進学する場合でも助成制度があります。子どもの進学にまつわる助成制度なども調べておくとよいいでしょう。
教育費は家計に占める割合が大きい項目なので、中長期にわたって教育費のイメージができると、将来の家計の状況がイメージしやすくなります。
購入したい住宅のイメージを具体化して
その上で、50歳で2LDKの住宅を購入したいとのことですが、どこのエリアの、どれくらいの金額の住宅を購入するのが妥当なのかもイメージしやすくなるのではないでしょうか。また、今後の車の買い替えについても計画が立てやすくなるでしょう。
お子さんが誕生すると、教育費を貯めつつ、住宅資金や車の買い替え資金、ゆくゆくは老後資金までも視野に入れ準備していく必要があります。
家計の状況の詳細がわからないので、今回は細かい金額のシミュレーションまではできませんでしたが、今後お子さんが誕生するにあたり考えておきたいマネープランのポイントをお伝えさせていただきました。これを機会にご夫婦で総合的に将来のマネープランについてお話してみてくださいね。