手取り世帯年収700万円。今のままで3人の教育費と住宅ローンと老後資金をまかなえる?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、37歳会社員の女性。40歳会社員の夫と共働きで、手取り世帯年収は700万円ほど。3人の子どもの教育費と住宅ローンを支払い、老後資金までまかなえるでしょうか? どんな貯蓄計画を立てればよい? FPの坂本綾子氏がお答えします。


3人の子どもがいますが、これからの教育費、自分達の老後資金の備えなど、家計の状況が今のままで大丈夫なのか心配です。

共働きで働いており、便利家電に頼ったり、できたものを買ったり、その辺はお金をかけてしまっている状況です。子どもたちが大きくなるにつれてさらに食費もかさむでしょうし、3人とも大学に行かせて、さらに自分達の老後の資金もと思うと心配です。

今の貯蓄としては、子どもたちが独り立ちするときに渡すための積み立てを月5,000円×3人分、大学費用のための学資保険を月1万円×3人分(200万円×3人)、自分達のiDeCoを私月2万3,000円、夫1万2,000円と、つみたてNISAを私1万円、夫1万5,000円ずつ積み立てしており、実質ボーナスを積立に回しているような状況です。

これから気をつけていくべき点、また家計の中で見直すべき点などありましたらご教示いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

【その他】

・3歳になる子どもはこの4月から保育料は、無償化で、3万5,000円→5,000円程度に下がります。

・住宅は2017年購入で35年ローンです。

・住宅ローンはフラット35のため、変動金利への借り換えを検討しており、団信がわりにかけている収入保障(保険料10万円/年)を解約または減額したいと思っています。

・退職金はいくら出るのかよくわからない状況です。

【相談者プロフィール】

・女性、37歳、会社員 ・夫:40歳、会社員

・子ども3人:7歳、3歳、1歳

・住居の形態:持ち家(戸建て)

・毎月の世帯の手取り金額:50万円(夫25万円、妻23万円+副業2万円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:100万円

・毎月の世帯の支出の目安:45万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:9万円

・食費:10万円

・水道光熱費:2万5,000円

・教育費:9万円

・保険料:2万3,000円

・通信費:1万5,000円

・車両費:5万円

・お小遣い:2万円

・その他:5万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:3万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:30万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,013万円

・現在の投資総額:100万円

・現在の負債総額:3,032万円

坂本:ご相談ありがとうございます。にぎやかなご家族の様子が目に浮かびます。教育費などこれからかかるお金は増えますが、お子様の成長が楽しみですね。

相談者さんのようなケースで、ぜひ作ってほしいのがライフプラン表です。家族全員の年齢を入れて、いつどんなイベントがあるかを記入し、これからの暮らしを「見える化」しましょう。今回はスペースの都合で、3人のお子様の進学の節目と、ご夫婦の定年、住宅ローン完済の年を表にしました。

ライフプラン表からわかった貯めどきは?

表を見ると、「なんとなくはわかっていたけれど、具体的には把握できていなかった」心配の原因がハッキリします。教育費がかさむ時期、老後資金の準備ができる期間、住宅ローン完済の年です。

3人のお子様は、数年おきに小学校、中学校、高校、大学と進学します。そして1人目のお子様が大学に進学する2034年からの10年が教育費の負担が大きくなる時期です。2042年には上の2人はすでに就職し、後は3人目のお子様の学費を残すのみですが、夫が60歳定年なら、最後の踏ん張りどきが定年の時期と重なります。

お子様が3人とも社会人になって教育費から解放される2044年に、相談者さんは59歳、夫は62歳です。教育費を払い終わってからでは、老後資金を準備する期間はほぼありません。

住宅ローン完済は、相談者さん67歳、夫70歳です。繰り上げ返済を行いもっと早く完済できるようにしないと、老後の生活が圧迫されそうです。

つまり、3人のお子様の教育資金を準備しつつ、老後資金も並行して準備し、さらに住宅ローンを繰り上げ返済するための資金も貯めるという、3つの貯蓄を並行して行わなければなりません。

教育費は私立大学の場合は足りない可能性も

まずは教育資金について。大学費用のための学資保険はこのまま続けます。独り立ちするときに渡すための積み立ても続けます。これにより大学入学までに、お子さん一人当たり学資保険200万円と独り立ち費用108万円で、合計308万円貯まります。

国立大学なら受験費用や入学金も含めて4年間の費用を払えるでしょう。私立大学に進学した場合は学部にもよりますが、足りない可能性があります。一番上のお子さんが大学生になるのは11年後。その時点での資産の状況などをもとに、他の貯蓄から出すのか、奨学金を利用するかを検討します。

老後のゆとりは退職金次第

次に老後資金について。iDeCoとつみたてNISAを夫婦合計で毎月6万円積立てています。これを老後資金に位置付けます。それぞれ60歳までに相談者さんの分が約911万円、夫の分が648万円。合計1,559万円になります。いずれも投資信託を利用した場合はこれより増えている可能性があります。

ここで気になるのが、退職金がもらえるかどうか。退職金が加わればさらに老後資金を積み増せるので早急に勤務先に確認しましょう。共働きなので、老後は夫婦で厚生年金をもらえるのが強みです。生活費を2人分の厚生年金でまかなえるなら、老後資金はリフォームや高齢者施設への入居資金、介護や医療費、旅行など楽しみの費用にも回せるでしょう。

また、退職金が出るかどうかに加えて、確認しておきたいのが定年年齢と定年後の継続雇用制度です。現在、日本では多くの会社が60歳定年で、本人が希望すれば65歳まで継続雇用になるのが一般的です。政策として70歳まで働ける環境作りも進められているので定年年齢を引き上げる会社もあります。夫婦ともに65歳または70歳近くまで働いて収入を得られるなら、教育資金の最後の踏ん張りがラクになると同時に、老後資金を準備する期間が長くなります。住宅ローンの繰り上げ返済や老後資金としても活用できます。

タイミングを見て繰り上げ返済を

最後に住宅ローンの繰り上げ返済について。相談者さんも予想する通り、お子さんの成長につれて食費などが増えていきます。いずれ、それぞれに携帯電話を持たせることになるでしょうし、お小遣い、部活動や習い事の費用などもかかるようになります。

相談者さんが37歳、夫が40歳なので、平均的には50代半ばまでは給与が増えていく可能性が高いです。生活費の増加分は収入の増加分でまかなって、貯蓄のペースを崩さないこと、貯めたお金を取り崩さないことを目標にします。現在の貯蓄1,113万円を温存することができるので、タイミングを見てこれを繰り上げ返済に充てます。

また、住宅ローンの借り換えを検討しているとのこと。フラット35の金利がわかりませんが、残債が約3,000万円あるので、金利差が1%前後あるなら、借り換えの効果はありそうです。借り換えにあたっては諸費用がかかるので、金融機関で支払額等をシミュレーションした上で検討してください。現在、インフレと金利上昇の兆しがあります。変動金利は、将来的には今の固定金利よりも金利が上がる可能性もあります。その際には、繰り上げ返済を行うことで、支払う利息が増えることを防げます。そのためにも繰上げ返済用の資金を手元に持っていたいものです。

無理な節約はせずに、家族で過ごせる期間を楽しんで

公共施設などを利用して家族でのレジャーをなるべく安くすませる、服はフリマアプリを利用するなど、子どもが3人いることで増えがちな費用を抑える工夫を。ただし、メリハリをつけて引締めつつも、無理な節約はしないこと。健康を損なわずに働き続けて一定の収入を確保することは、重要な家計管理の一環です。便利家電も必要なら使いこなして合理的に暮らしましょう。現在の支出については、お子様が小さいにしては食費が多いと感じますが、他の支出は特別多いようには思えません。家族で過ごせる期間は限られています。お子様との生活を楽しんでください。

今後のライフイベントを意識してしっかり家計管理をしていきましょう。

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