てのひらの味

 きょうも好天らしい。この大型連休は、途中に平日を挟む飛び石で、中にはきょうまで10連休という人もいる。久しぶりの小旅行や帰省をした人もいれば、弁当を持って野山にお出かけしたご家庭もあるだろう▲弁当箱には、のりで巻いたおにぎりが入っていたかどうか…などと、西日本では「おにぎり」と言うのが普通だが、東日本ではかねて「おむすび」と呼ばれてきたという▲手元の辞書で「おむすび」を引けば〈最近は「おにぎり」が一般的呼称になりつつある〉と説明が添えられている。「おむすびころりん」といった昔話を連想するためか、「おにぎり」とは違って、遠い昔を思わせるような響きが「おむすび」にはある▲〈母の日の てのひらの味 塩むすび〉鷹羽狩行(たかはしゅぎょう)。きょうは「母の日」、遠い日のおむすびの、少ししょっぱい味を思う人もいるだろうか▲きょうは、お母さんを主役にごちそうを囲むご家庭があり、照れながらプレゼントを贈る人がいる。〈てのひらの味〉の記憶をたどる誰かも、きっといる。どれも添えるとすれば「ありがとう」の一語に違いない▲「むすんでひらいて」のように「結ぶ」には「手のひらを閉じる」の意味がある。手のひらで結ぶ。「おむすび(御結)」という素朴な呼び名は、思えば懐かしい昔のように美しい。(徹)

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