5月9日

 〈あの偉い発明家も凶悪な犯罪者も/みんな昔子どもだってね〉-ロックバンド「THE YELLOW MONKEY」が1996年に発表したヒット曲「JAM」には、どんな人物にも子どもだった時分があったのだ、と歌う印象的な歌詞がある。もちろん彼にだって▲今年のカレンダーは、あらゆる年齢の“子どもたち”が母親への感謝を思う日曜日と、旧ソ連の「対ドイツ戦勝記念日」が隣り合わせに並んだ▲ロシアのウクライナ侵攻が始まって2カ月半。メモリアルな日の到来を前に戦果を焦る指導者が独善と短慮と暴走の果てに核の惨禍を引き起こす-そんな恐怖のシナリオが、これほど現実味を帯びて深刻に心配された日々をこれまでに知らない▲記念日のパレードには、核戦争の勃発時、大統領らを乗せた“作戦本部”となる「終末の日の飛行機」も登場予定だった。誰に何を見せるつもりだったか。ロシア大統領府は前日、「人々に戦争の惨禍をもたらしたナチズムの復活を許さないことが共通の義務だ」とのメッセージを国民に向けて発表した▲憤りは募るばかりだ。ただ「どの口が言うのか」という素朴な感想だけを残して「5月9日」が過ぎようとしていることに素直に安堵している▲安堵しながら、まだ何も終わっていない-と思い直す。(智)

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